自分の足で歩ける体を維持したいなら、筋肉はもちろん、体を支える骨とその骨同士をつなぐ関節の維持が大切だ。特に上半身と下半身をつなぐ股関節は、人間の体の中で最も大きな関節で、体の中で最も酷使されている関節の一つ。股関節を維持できるかどうかが、「歩く力」の維持に重要となってくる。本特集では、股関節の基礎知識から、長く健全に保つポイントまでを一挙に紹介する。
テーマ別特集「股関節」
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何歳になっても、自分の足でスタスタ歩ける体を維持したい――。これを実現するために、多くの人が最初に思い浮かべるのは「筋肉の維持」ではないだろうか。もちろん筋肉を維持するのは大切だが、それだけでは不十分。体を支える骨とその骨同士をつなぐ関節の維持も極めて重要だ。
私たちが立ち上がったりしゃがんだり、歩行したり、という日々の動作の繰り返しの中で知らず知らずのうちに消耗しているのが関節。その中でも、上半身と下半身をつなぐ股関節は、人間の体の中で最も大きな関節で、体の中で最も酷使されている関節の一つだ。股関節を維持できるかどうかが、「歩く力」の維持に重要となってくる。
股関節が消耗すると、歩行が困難になるのはもちろん、生活に大きな支障が出て、「負の老化スパイラル」に陥る可能性がある。
そこで今回の「テーマ別特集」では、股関節の健康の保ち方や、一生歩ける体を維持するための生活習慣を、関連記事からピックアップして紹介していこう。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
体は股関節から老化する! 自分の足で歩き続けるための秘訣
年間600例以上の人工股関節手術(置換術)を手がけている股関節のエキスパートである石部基実クリニック院長、石部基実さんは、「股関節は、さまざまな姿勢や動作を支える要となる、極めて重要な存在です。しかし、その重要性はあまり意識されていません。股関節が消耗して、痛みが出ると、歩行が困難になり、生活に大きな支障が出るようになります」と話す。
石部さんは、「日本人固有の要素もあり、股関節を傷めるリスクが高い人もいますが、それだけではなく日々のライフスタイルも大きく関係しています。股関節の負担を減らす歩き方などを実践することで、リスクを下げることができます。そして強くしなやかな股関節は、年を重ねてからの転倒リスクを下げ、万が一転倒した場合でも、その衝撃を最小限に抑えてくれます」と話す。
股関節とは、太ももの付け根にある関節で、上半身と下半身をつなぐ、体の中で最も大きな関節だ。骨盤の両側にある臼状のくぼみに、大腿骨の球状の先端がはまりこむ構造になっていて、前後や左右、回旋をするように動く。それぞれの先端部をカバーしている軟骨が、潤滑油の役割を担っている(下図)。


胴体と両脚をつなぐジョイント部分となっている股関節。立ち上がったり座ったりするときの動作の要となり、上体をまっすぐ立てるときの支点にもなっている。この股関節には我々の想像以上の負荷がかかっているのだという。
「股関節には常に大きな負荷が加わっています。通常の歩行時には、体重の3~4.5倍、ジョギング時には体重の4~5倍、階段の上り下りには体重の6.2~8.7倍という負荷がかかります。例えば、体重70kgの人なら、歩くだけで股関節にかかる負荷は210~315kgにもなるのです」(石部さん)
「股関節にかかる負荷の大きさは、ひざや腰の関節にかかる負荷よりも大きく、股関節はそれだけ、ダメージを受けやすい関節といえます」(石部さん)