肝臓は生命維持に欠かせない臓器で、実にさまざまな機能を担っている。だが、肝臓は「沈黙の臓器」だけあって、肝機能関連の数値がちょっと悪くなったくらいでは症状は現れない。「とりあえず今は大丈夫だから…」と放置している人も多いかもしれないが、甘くみてはいけない。本テーマ別特集では、誰もが正しく知っておくべき「肝臓の新常識」をまとめた。
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会社などの健康診断で結果が出たとき、多くの人が気にするのは「γ-GTP」などの肝臓のデータではないだろうか。特に、酒好きなら、いつまでも酒を楽しむために、「肝機能を低下させたくない」「低下した肝機能を高めたい」と思うもの。健診結果を見て、酒量を減らしたり、休肝日を設けたりしたことがある人も少なくないだろう。
実際、健康診断で、肝機能の数値に何らかの異常があるビジネスパーソンは多い。しかし肝臓は「沈黙の臓器」。γ-GTPなどの数値が多少悪くなったくらい、あるいは肝臓に脂肪がたまり「脂肪肝」になっても、自覚症状は出ない。「とりあえず、日常生活は問題ないから」と放置し続けると、肝機能が低下し、肝硬変、さらには肝臓がんに至る可能性がある。
現在では、脂肪肝はさまざまな病気の入口になるということもわかってきている。脂肪肝の人は、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を起こすリスクが高くなるだけでなく、動脈硬化が進行し、心臓病や脳卒中を発症するリスクも高くなる。そして、糖尿病になると認知症リスクも高くなる――というように、脂肪肝を放置すると、さまざまな病気を誘発する“負のスパイラル”が起こる可能性がある。
今回のテーマ別特集では、知られざる肝臓の機能から、健診での肝機能データの見方、“放置するとまずい脂肪肝”、脂肪肝の検査方法、そして脂肪肝から脱却するための生活習慣の改善法について解説していく。
(※関連記事の一覧は最終ページに紹介しているので、より詳しく知りたい人はそちらもご覧ください)。
肝臓には3つの重要な機能がある
まず、肝臓という臓器について、きちんと理解するところから始めよう。肝臓というと、アルコールばかりを想像する人が多いが、実は、さまざまな機能を担っている。
肝臓専門医である自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科 元准教授の浅部伸一さんは「『肝臓=アルコールに関係する臓器』というイメージですが、それだけではありません。アルコールや薬剤などを無毒化する『解毒』は大切な機能ですが、肝臓はその他に、食べ物のエネルギーや栄養素をストックしたり調節したりする『代謝』、消化を促したり、老廃物を排出する『胆汁(酸)の生成』を担っています」(浅部さん)

肝臓は1.2~1.5kgもある人間最大の臓器で、牛レバーと見た目はそっくり。なめらかで赤みがかった色をしているという。赤いのは血液が含まれているからだ。肝臓には1日に2000L以上もの血液が流れ込む。血液中のさまざまな成分を酵素によって変化させ、必要な物質を作り出しているのだ。そのため肝臓は“生命の化学工場”とも呼ばれる。
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