年を取ると多くの人が感じる「膝の痛み」。その原因で最もよくあるケースが「変形性膝関節症」だ。膝が痛いと外出がおっくうになり、体を動かす機会が減るため、そのまま何もしないとますます足腰が衰えてしまう。だが実は、変形性膝関節症の痛みをとり、関節の動きを改善するために有効なのが、膝への負担を抑えた「運動」なのだ。ここでは、膝の痛みが起きる仕組みから、改善するための運動のやり方までをまとめよう。
テーマ別特集 つらい変形性膝関節症の対策
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年を取るに従って「膝が痛い」と訴える人が増えてくる。膝は、立つ、歩く、走るなどの動作において体の重みを支え、地面からの衝撃を受け止めている関節なので、日ごろからかなりの負担がかかっている。
その負担が徐々に積み重なって膝にダメージを与え、痛みとなって現れるのが「変形性膝関節症」だ。

変形性膝関節症の人は、全国で2530万人以上いると推測されている(*1)。そのうち男性は860万人、女性は1670万人で、女性が多い。主な原因は膝関節の“老化”だが、過去の骨折、靱帯や半月板の損傷、化膿性関節炎などの後遺症として発症する例もある。
フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは、「膝が痛くなると、いくらウォーキングやジョギングが体に良くても、取り組む気力がなくなってしまいますよね。それどころか、外出するのもおっくうになって、足腰が弱り、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)にまっしぐら、ということにもなりかねません」と指摘する。
「クッション潰し」で膝の痛み、関節の動きを改善
変形性膝関節症では、どのようにして痛みが出てくるのだろうか?
膝の関節は不安定な構造をしている。太ももの骨である大腿骨と、脛(すね)の骨(脛骨)の間にはクッションの役割を果たす軟骨組織があり、それらが関節包に包まれていて、内部は滑液で満たされている。
長年、負担をかけ続けることで、軟骨組織や、2つの骨の骨頭部がすり減って関節包の中にたまり、内側の滑膜に炎症が起きる。これが、変形性膝関節症の痛みの正体だ。軟骨組織が減ってしまうと、骨同士が直接触れ合って関節に炎症が起こるようになる。ひどくなると滑液が増え過ぎて、いわゆる「膝に水がたまった」状態になってしまう。
初期の段階では、立ち上がったり、歩き始めたりする動作の開始時に痛みを感じて、少し休むと痛みが治まる。しかし、進行するにつれて正座や階段の昇降が困難になってきて、さらには安静時にも痛みを感じるようになる。画像診断でも関節の変形が見られるようになり、そのうちに膝を真っすぐに伸ばす歩行が困難になっていく。
「膝関節の軟骨は、一度すり減ると、元の形に修復することは不可能だと言われています。加齢に伴って少しずつ悪化していくので、一般的に変形性膝関節症のケアは、主に痛みを緩和し、関節の動きを改善していくことになります」(中野さん)