寝たきりを防ぐには「速筋」を筋トレで鍛えて太くしよう!
第2回 筋肉の仕組みを知り効果的に増やす
松尾直俊=フィットネスライター
健康寿命を延ばし、いつまでも自分の足で歩き、寝たきりを防ぐためにも、「筋肉」の重要性がますます高まっている。ただ、やみくもに筋トレしても効果は上がらない。“筋肉博士”こと東京大学大学院教授の石井直方さんに、知っておきたい筋肉の基本的な仕組みについて解説していただこう。
前回は、「健康寿命を延ばすためになぜ筋肉が重要なのか」について、東京大学大学院教授の石井直方さんに解説してもらった。それによると、転倒につながる「運動器の機能低下」はもちろん、「脳卒中」「認知症」という要介護になる原因を予防するために、筋トレによる筋肉量の維持、筋力の強化が重要になってくるということだ。
ただし、やみくもに筋トレをしても効果は上がらない。筋肉を鍛えることでどのような変化が起きるのかという基本的な仕組みから、今回も引き続き石井さんに解説してもらおう。
筋肉の種類は「心筋」「骨格筋」「平滑筋」の3つ
人体には約650以上もの筋肉があるといわれている。だが、スポーツやトレーニングをするとき以外、普段の生活の中でその存在を意識することはあまりない。
「筋肉は、体を動かすための運動器であり、車で言えばエンジンです。筋肉がなければ、しゃべることもできませんし、物を食べることも、極端に言えば、呼吸もできません。体の中にある臓器のうち消化管や血管の壁は『平滑筋』という筋肉でできています。じっとしていても、心臓の『心筋』は拍動を続けて血液を送り出していますし、腸はぜん動運動(*)を行っています」(石井さん)
一般的に「筋肉」と言うと、我々がイメージするのは体形を形作る「骨格筋」だ。これが主に、体を動かし、移動させるという役割を担っている。また、骨格筋は骨に付着していることも特徴だ。
「骨格筋は、重力などに対して姿勢を維持するという役割もあります。立っていても座っていても、低いレベルですが、体の中のどこかの筋肉が緊張して力を出し、姿勢を保っているのです」(石井さん)
骨格筋には別名「抗重力筋」と呼ばれるものがある。筋肉がなければ、重力などに対抗できずに、人間としての活動ができなくなるのだ。ちなみに、重力が小さい国際宇宙ステーションに長く滞在した宇宙飛行士は、無重力に慣れて力を出す必要がないので筋肉が細くなる。そして地球へ帰還した直後は、姿勢を支えられずに体が急に重く感じられ、重力の存在を強く意識するという。
そして、筋トレによって鍛えられるのもこの骨格筋だ。しかも、骨格筋は大きく「速筋」と「遅筋」に分けられるのだが、健康寿命を延ばすために意識してまず鍛えるべきなのは速筋のほうなのだ。
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