知ってるつもり? 健康寿命のウソ・ホント
日本の健康寿命は本当に長いのか? 健康寿命に影響する要因は?
北村昌陽=科学・医療ジャーナリスト
最近、よく話題になる「健康寿命」。漠然と「健康でいられる期間」などと理解している方が多いかもしれないが、実際にはどういう数字なのか説明できるだろうか。また、日本は長寿の国と言われるが、健康寿命も長いのだろうか。健康寿命に影響する要因は何なのだろうか――。これら「知っておくべき健康寿命のウソ・ホント」について、厚生労働省・健康日本21(第二次)推進専門委員会委員長などを務める東北大学大学院医学系研究科 教授の辻 一郎さんに話を聞いた。
A. 平均寿命のうち「健康的に暮らせる期間」が、健康寿命です。

「健康寿命」とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。人生には、病気やけが、加齢といったさまざまな理由で、生活や行動が制限される期間があります。それを除いた、健康的な生活が送れる期間を「健康寿命」と呼ぶのです。
一方、よく知られている「平均寿命」は、いま0歳の人がどれだけ生存できるかを指す数値のこと。日本は、男女とも平均寿命が長い長寿の国ですが、少子高齢化が進む最近は、単なる長寿以上に「健康で長生き」が重視されます。そこで最近、「健康寿命」が注目されているのです。
「実際には、何をもって『日常生活が制限される』とするかによって、健康寿命にもいろいろな種類があります」。東北大学大学院医学系研究科教授で、公衆衛生学が専門の辻一郎さんはこう話します。
主なものは次の5種類です。
- ①社会生活(学業・就労・運動など)を営む上で制限のない期間
- ②自分は健康であると自覚している期間
- ③認知症のない期間
- ④日常生活動作(食事、排泄など)を行う上で制限のない期間
- ⑤介護保険の認定を受けない(認定非該当=自立)期間