「100歳」生きる人に学ぶ“長寿のメカニズム”
ここまでわかった! 「長寿の科学」最前線(前編)
北村昌陽=科学・医療ジャーナリスト
近年、100歳以上生きる人が年々増加の一途をたどっている。とはいえ、誰もが100歳まで生きられるわけではない。100歳まで生きられる人と、そうでない人はどこに違いがあるのだろうか。よく「長寿の家系」などと言われるが、やはり遺伝的要素が大きいのだろうか。
そこで、長寿者の医学研究を行っている慶應義塾大学医学部 百寿総合研究センター講師の新井康通さんに、100歳まで生きられる人とそうでない人は体の中にどんな違いがあるかを、今回から2回に分けて聞いていく。
遺伝要因の寿命への関与は2~3割程度
日本で100歳以上生きる人が急増しています。一昔前は、100歳というとかなりの長寿という印象でしたが、最近では珍しくなくなりつつありますね。
新井さん 百歳以上生きる人を「百寿者」と呼びます。日本の百寿者研究の草分けである、琉球大学の鈴木信名誉教授が作られた言葉です。日本の百寿者は年々増加しており、2016年には6万5692人に達しました。
慶応大学では1992年から、百寿者の医学調査を行っています。その当時は4000人程度しかいませんでしたから、四半世紀ほどの間に、約16倍にも増えたことになります。改めて振り返ると、隔世の感があります。
百寿者研究は、長生きの人の体や生活習慣を調査・研究することで、健康長寿を支える要因を見つけるのが狙いです。単に寿命を延ばすというより、「健康で長生き」を実現するのが目標です。
90年代に長寿姉妹として話題になったのが、きんさん、ぎんさんの双子の姉妹でした。あの二人は一卵性双生児、つまり全く同じ遺伝子を持っています。ああいう姿を見ると、「寿命は遺伝で決まるのでは?」と思う人がいるかもしれませんが、短命の人が多い家系から百寿者が出ることもあります。全てが遺伝で決まるわけではありません。
一般に、遺伝要因の寿命への関与は2~3割程度と言われます。100歳を超えるほどの長寿のケースでは、遺伝的な影響がもう少し高まるという説もありますが、いずれにしても、“生まれつき”ではない要因の影響が、かなり大きいようです。
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