老け込むのはまだ早い! 「定年になったら認知症」を回避しよう
第3回 仕事を辞めたらもの忘れを連発!? 自分の脳と上手に付き合おう
伊藤和弘=フリーランスライター
「名前が出てこない」、「自分が何をしようとしたのか忘れる」…。年齢とともに増えてくるもの忘れは、ミドル以上なら誰にでも経験があるもの。定年などで仕事を辞めた途端にもの忘れを頻発することがあり、放っておくと認知症につながる恐れがあります。どのように対策をとればいいでしょうか。北品川クリニック所長の築山節さんに聞きました。
第1回「もの忘れ」は怖くない!? 認知症リスクの高い50代の特徴とは?
第2回 もの忘れを改善するにはまず「睡眠」から! 脳をきちんと休めよう
第3回 老け込むのはまだ早い! 「定年になったら認知症」を回避しよう
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前回、もの忘れが起きる仕組みを、「脳の三層構造」から解説した。
理性の中枢である第三層の大脳新皮質に問題があると、もの忘れなど認知機能の障害となって表れるが、その原因は第一層や第二層にトラブルが起きている可能性がある。だからこそ、第一層(生命の中枢)の脳幹に負担をかけず、第二層(感情の中枢)の大脳辺縁系が暴走しないような生活を送ることがまず大切だ。

この特集では、これまで働き盛りの人が経験するもの忘れについて主に取り上げてきた。仕事が忙しく、十分に睡眠、休息を取れないことにより脳にダメージが蓄積し、脳機能が低下してもの忘れが起きる。だが一方で、定年などで仕事を辞めた途端に、何もすることがなくなり、ぼんやり日々を過ごしているうちに、もの忘れが頻繁に起きるようになることもある。
会社に通わなくなった途端に起きるもの忘れに注意
実際、定年がきっかけで認知症になってしまう「定年認知症」という言葉は昔からある。しかし、今の日本人の平均寿命は男女ともに80歳以上。60歳ちょうどで定年を迎えることは減ったものの、仕事を辞めたからといって早々に老け込んでいる場合ではない。最後までしっかりした頭で人生をまっとうしたいと誰もが思うはずだ。
「定年になると会社に通う必要がなくなり、生活サイクルが乱れ、勉強や努力もしなくなる。それが定年認知症を引き起こします」と北品川クリニックの築山さんは指摘する。
定年認知症を防ぐには、仕事を辞めても生活のスタイルを大きく変えないように気を配る必要がある。そのためのポイントは、次のように大きく3つある。
- 1 生活サイクルを整え、体内時計を乱さないようにする
- 2 生活習慣病対策として、血圧、血糖値、運動不足に注意する
- 3 新しい情報に興味を持ち、アウトプットも行う
会社に通わないのだから、無理に早起きしなくてもよくなる。“毎日が日曜日”なのだから、欲望のままに寝たいだけ寝て、眠くなるまで起きている生活も可能かもしれない。
だが前回説明したように、自由気ままで不規則な生活サイクルは体内時計を狂わせ、自律神経をつかさどる脳幹に大きな負担をかける。脳の土台である脳幹の負担が大きくなると、上位にある高度な認知機能も十分には働かない。そんな生活を続けていると、確実に脳の機能は衰えていく。