「腰が痛い」ときの自己診断~あなたの腰痛はどのタイプ? どうすれば治る?
第3回 様々な腰痛の症状と原因を知り、治療法を理解したい
梅方久仁子=フリーライター
化膿性脊椎炎~脊椎に細菌が感染することで起こる
どんな病気
高齢者や糖尿病患者、透析患者、ステロイド長期使用者、悪性腫瘍に罹患して免疫抑制治療を受けている人などに起こることが多い。上気道や尿路の細菌感染などが血行性に脊椎に波及して感染巣を作り、熱発して激しい腰背部痛のために体動困難となる。
肺や消化器の感染巣から波及する場合では脊椎への感染はマスクされて脊髄麻痺や脊椎に著しい変形が出現するまで気付かれない場合があり。感染性疾患の治療中に腰痛が併発した場合には注意が必要である。
また起炎菌が弱毒性の場合でも発熱や感染徴候が軽度になり、そのために診断が遅れることがある。初期ではレントゲンに脊椎の変化はみられず診断が難しく、MRIを用いた早期診断が重要である。感染巣から流出した膿が神経を圧迫して脊髄麻痺を生じることがある。
治療法
起炎菌を同定することが先決事項であり、抗生剤の点滴を行う前に血液培養検査で細菌を検出する。発熱が軽度な場合、すでに抗生物質による治療が開始されている場合は細菌の検出が難しい。必要があれば脊椎の病巣を穿刺した液から細菌培養を行い、抗生剤の感受性を調べて薬剤選択を行う。脊髄麻痺や脊柱が変形するような病巣の拡大を見る場合は外科的に病巣を郭清して、健全な骨組織を移植する手術が行われる。
その他の病気
腰痛が主な症状でありながら脊柱以外の内臓の病気が原因である場合もある。たとえば次のようなものがある。
解離性大動脈瘤
大動脈の壁に裂け目ができ、その隙間に血液が入り込んで裂け目を拡大し、血管がこぶ状に膨れあがる病気。動脈壁が解離するときにひきちぎられるような腰の痛みが起こる。激しい痛みで顔面蒼白、冷汗などがみられる。一刻も早く適切な処置をしないと生命の危険がある。
尿路結石
結石が尿管などに詰まり、わき腹や背中に激痛を起こす。結石の移動により痛みの部位が下腹部や陰部に移動する。尿検査で血尿が見られれば本症を疑い、レントゲンで尿管の位置に結石を認める。多量の水分摂取や縄跳びや階段降りで結石の排出を促す。薬物療法で排出がみられない場合は、体外衝撃波で結石を破壊して排出させる方法もある。
子宮内膜症
本来子宮内腔にあるはずの子宮内膜組織が、卵巣など子宮外にできる病気。ホルモン周期により子宮内膜の増殖、剥離が起こり、月経時に下腹部痛や腰痛がみられる。
その他、胆嚢、十二指腸、すい臓など、背中に近い部分の臓器に炎症を伴う病気では、腰痛が最初に現れる症状である可能性がある。
(監修:宮本雅史 日本医科大学病院教授、多摩永山病院整形外科部長)
