どんな人も、疲れると「寛容力」が下がる
イライラしたら、まずは休むのが効果的――『寛容力のコツ』の著者に聞く(第3回)
柳本操=ライター
その疲労がさらに進むと、うつっぽくなるのですね。
下園さん そうです。イライラするエネルギーすら尽きてしまい、涙が止まらなくなるなど、感情を抑制できなくなったり、感情そのものが出てこなくなったりします。こうなると「うつ病」という診断名がつきます。
「プチうつ」のときには、自分が理解されず、気遣ってもらえないことへの被害者意識が大きくなります。しかし、このようなときは、周囲がどうこうではなく、自分をケアするために、「休む」のが一番の対処法となるのです。
3日間、集中して休んでみよう
「休む」方法として、「3日間、集中して休む」というやり方が著書では紹介されています。ひたすら眠り、本も雑誌も読まない、ネットからも距離を置く。食事は出前をとるか事前に買い込むなど、とにかく何もしないことが大切なのですね。うっかり、「休んだときこそ自分を見つめ直そう」などと考えて、自己啓発書を読もうとする人もいそうですが。
下園さん だまされたと思ってやってみてほしい。とても役立つ方法です。そもそもこれは戦場で生まれた知恵なのです。戦場に行くと、肉体的にも精神的にも、過酷な状況であるためにあっという間に消耗し、疲弊し、本来のパフォーマンスを発揮できなくなります。かつてはこれは精神疾患によるものだと思われていたのですが、あるとき「とりあえず休ませよう」と3日間、何もしないで休息させてみると、非常に効果的だったのです。
現代人が元気を取り戻すためのポイントは、とにかく、刺激から離れて休憩をすること。原始人のときであればエネルギーを取り戻すためには「食べること」が重要だった。しかし今、パソコンやスマホのおかげでどうしても24時間態勢で頑張り続けなければいけない現実があります。だからこそ、ネットやメールといった「感情への刺激」から離れ、何もしないことが大切なのです。
その「休みどき」が自覚できない人がいるかもしれません。
下園さん その通り。今、あなた自身の体にスマホの電池残量みたいな表示があるとしたら、どのぐらいエネルギーは残っていると感じますか?
実は、多くの人は、エネルギーの減り具合を自覚できていません。運動後の「はぁー、疲れた!」という疲労は分かるけれども、日常の中では「そんなに疲れていません」とおっしゃる人が多いのです。
しかし、実際にはけっこう疲れていて、その疲れはどこに表面化するか。仕事の能率の悪さや、寛容力の低下に出るのです。まさに、イライラを封じ込めるエネルギーがなくなった状態が「疲労がたまった」状態。わけもなくイライラするときには、とりあえず休もう、と切り替えてみましょう。
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