ダイエットやメタボ対策の定番になった“緩やかな糖質制限”ロカボ。このロカボを提唱したのが糖尿病専門医の山田悟さんです。本連載では、「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になる」ことが何よりも大事、と話す山田さんが、ロカボについて医学的根拠から説き起こし、わかりやすく伝えていきます。今回は、糖尿病が「恐ろしい病気」と言われるゆえんである「合併症」について話していただきます。
気づかないうちに進行する糖尿病の「合併症」の怖さ

前回は、私が臨床現場で向き合っている「糖尿病」の現状についてお伝えしました。最新の「平成28年国民健康・栄養調査」による推計では、日本の糖尿病患者は過去最多となっています。糖尿病予備群は減少傾向にあるものの、成人男性では、いまだに3割の方が糖尿病かその予備群である、という状態です。
さらには、統計データでは見逃されている「食後高血糖」の状態である人も多くいることが推定されます。なのに、糖尿病が強く疑われていても「治療を受けていない人」が少なくなく、40代男性では5割近くにも及ぶ、ということが大問題である、ということをお伝えしました。
では、糖尿病が疑われているにもかかわらず治療を受けていない人、また、治療を途中でやめてしまう人には何が起こるのでしょうか――。その答えは「合併症」です。放置すると、合併症のリスクがどんどん高くなっていくのです。
とはいえ、読者の多くの方は、「合併症」といってもピンと来ない方も多いのではないでしょうか。糖尿病で本当に恐ろしいのは、糖尿病そのものよりも、糖尿病を発端として発症する合併症なのです。例えば、前回も少し触れた、人工透析による治療が必要となる腎不全は糖尿病の合併症の一つです。今回は、合併症について詳しく解説しましょう。
細い血管が傷つくことで起こる「3大合併症」
糖尿病とは、血糖値が高い状態が続くことによって、体中の血管が内側から傷んでいく病気です。
血管は全身に栄養を運び、老廃物を回収していますが、血液中の糖の濃度が高い状態となると、血管が傷ついたり、詰まったりして、血流が滞ります。高血糖によって血管とそこからつながる臓器が障害を受けていくのが、合併症なのです。
「糖尿病は合併症のデパート」という言葉があるほど、糖尿病は実にさまざまな合併症をもたらします。その中で「糖尿病の3大合併症」といわれているのが、「細小血管合併症」と呼ばれ、細い血管が傷つけられることによって生じる、「神経」「目」、そして「腎臓」の障害です。3つの頭文字をとって「しめじ」と呼ばれています。