ダイエットやメタボ対策の定番になった“緩やかな糖質制限”ロカボ。ロカボを提唱したのが糖尿病専門医の山田悟さんです。本連載では、「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になる」ことが何よりも大事、と話す山田さんが、ロカボについて医学的根拠から説き起こし、わかりやすく伝えていきます。今回は、前回に引き続き「運動」について解説していきます。運動が血糖値抑制にいい効果があることは前回解説しましたが、実際にどのような運動を行うのが効果的なのでしょうか。

前回は、運動をすることによる筋肉への刺激が、糖の筋肉への取り込みを促し、血糖値抑制に結びつくというお話をしました。
運動は短期的な血糖値上昇を抑える効果があるのはもちろん、「普段から運動する習慣がある」というだけでも血糖値を下げる効果が期待できます。本連載のメインテーマである、緩やかな糖質制限「ロカボ」を実践するのと併せて、ぜひ運動を習慣化してください。
ここまで話を聞かれると、「どのくらい、どんな運動をすればいいか」ということが知りたくなると思います。今回は具体的な運動法について紹介していきましょう。
どのくらいの運動をすればいいの?
前回も少し解説しましたが、糖尿病治療において「運動療法」は、食事療法、薬物療法とともに糖尿病治療の3本柱の1つになっています。実際に運動と血糖値についてもさまざまな研究がなされています。
多くの研究でわかっているのは 「中等度の運動を、1週間当たり150分程度行うと、糖代謝が高まり、血糖値を正常に維持する効果が期待できる」 ということです。
ここでいう「中等度」の運動とは、息が少しはずむ程度の運動で、具体的には、軽いジョギングやエアロビクス、階段の昇降などがそれに相当します。一般的な歩行(ウォーキング)は「軽い」運動となり、ランニングや水泳は「強い(きつい)」運動に該当します。
週150分という時間は、1日当たり20分超、土日だけ運動するなら各75分ということになります。ただし、週末にまとめて実行するのではなく、1週間のうち中2日を空けずにいくつかに分散させて行うのが望ましい、とされています。
この時間が週当たり350分に増えると、肥満している人の場合、体重もかなり減らすことができるとされています。体重が減ると内臓脂肪が減り、内臓脂肪から出るインスリンの反応を邪魔する「TNF-α」や「レジスチン」といった物質の分泌も減少します。すると、同じインスリン量が出たとしても、筋肉中のGLUT4がさらにしっかりと効き、血糖値が下がりやすくなるというわけです。(※GLUT4については前回を参照)
「息がはずむ程度ではなく、ランニングや水泳などもっとハードな運動をすれば効果が上がりそう」と思われる方もいらっしゃると思います。もちろん、効果は高まりますが、運動の強度が高くなると、心臓の負担が増えるというリスクも考えられます。ハードな運動を行う際には、事前にかかりつけ医に相談されることをお勧めします。