ダイエットやメタボ対策の定番になった“緩やかな糖質制限”ロカボ。このロカボを提唱したのが糖尿病専門医の山田悟さんです。本連載では、「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になる」ことが何よりも大事、と話す山田さんが、ロカボについて医学的根拠から説き起こし、わかりやすく伝えていきます。今回のテーマは、年齢とともに気になってくる「認知症」。ロカボによって、認知機能の低下リスクを抑えられる可能性があるのです。
糖質の摂取が認知症リスクと関わっている?
前回は、「老化の原因」として最近クローズアップされている「糖化」と糖質の摂取についてお伝えしました。高血糖状態を防ぐ「ロカボ」によって老化の原因物質である「AGEs(糖化最終生成物)」の生成が抑えられ、全身の老化のスピードを遅らせる効果が期待できます。

さて、老化というと、誰もが気になるのが「認知症」ではないでしょうか。日本人の寿命が延びる中、多くの人にとって最も不安を感じる病気の1つでしょう。
では、どうすれば認知症になるリスクを下げることができるのでしょうか。一般に、認知症対策としてよく知られているのが、脳トレなどに代表される知的活動、コミュニケーション、運動、そして「食生活の改善」です。
ご存じですか? 実は、本連載のテーマである「糖質の摂取」も認知症リスクと密接に関係しているのです。そこで今回は「ロカボと認知症」というテーマでお話ししたいと思います。
厚生労働省の発表によると、2012年の時点で国内の認知症患者は約462万人にもなります。そして、認知症の有病率は年齢を重ねるほどに高まっていきます。今後、高齢者人口の増加とともにその患者数も増加し、2025年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加する見込みです(下のグラフ)。

認知症の中で最も多いのが、アミロイドβなどのたんぱく質が脳に蓄積して脳の神経細胞が死滅していくのが主な原因とされる「アルツハイマー型認知症」。次に多いのが、脳梗塞や脳出血などが原因となり脳の血液循環が悪くなり、脳の一部が壊死する「脳血管性認知症(血管性認知症)」です。このほか、レビー小体という異常なたんぱく質の塊ができることにより神経細胞が死滅する「レビー小体型認知症」などがあります。
では、これらの認知症と高血糖(糖尿病)はどう関係しているのでしょうか?