ダイエットやメタボ対策の定番になった“緩やかな糖質制限”ロカボ。このロカボを提唱したのが糖尿病専門医の山田悟さんです。本連載では、「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になる」ことが何よりも大事、と話す山田さんが、ロカボについて医学的根拠から説き起こし、わかりやすく伝えていきます。今回のテーマは「老化の防止」。ロカボの実践は、肌はもちろん、血管、骨、内臓など全身の老化スピードを抑えていくことにつながるのです。
摂取する「糖質」と「老化」の深い関係
前回は、緩やかな糖質制限(ロカボ)を毎日の習慣にすることによって、昼食後の眠気がなくなる、夜間の眠りの質がよくなる、といった生活の上で起こる「いいこと」についてお伝えしました。
今回のテーマは、男性・女性を問わずに誰もが興味がある「老化の防止」、いわゆる「アンチエイジング」について。実は、食べ物から体内に入る「糖質」と「老化」は密接に結びついているのです。
アンチエイジングの大きな要因として、最近大きくクローズアップされているのが「糖化」です。この糖化というキーワード、近年、テレビや雑誌などでも「老化の原因」の一つとして頻繁に取り上げられているので耳にしたことがある方も多いでしょう。

そもそも「糖化」という言葉を発見したのは、1912年、フランスのルイ・カミーユ・メイラードという科学者です。彼は、食品中に含まれる糖類がたんぱく質と結びつき、茶色くなったり香ばしくなったり、固くなったりする変化を「糖化」と名付け、彼の名前をとってこの反応は「メイラード反応」と名付けられました。パンケーキを焼いたときなどに、こんがり香ばしくなるのは、うれしい反応ですが、この糖化が私たちの体の中で起こると、喜ばしくない反応を引き起こしてしまうのです。
「糖化」は全身の「老化」を促進する
そもそも、体内での糖化はどのように起こるのでしょう。
連載ではこれまで、中高年以降、過剰に糖質を摂取する習慣を続けることによって、食後に血糖値が跳ね上がる「食後高血糖」や、血糖値が慢性的に高くなる「糖尿病」を招きやすくなることを解説してきました。通常、糖質のとり過ぎというと、糖尿病や肥満を想像する方が多いかもしれませんが、実は老化にも密接に関係することがわかってきました。これが今回ご説明する「糖化」のお話です。
食事からとった糖質が多く、体が高血糖の状態になると、余った糖は体内のたんぱく質にくっつきます。すると、たんぱく質が劣化してAGEs(advanced glycation end products=糖化最終生成物)という老化物質が生成されるのです。
AGEsが体内に蓄積すると、それぞれの組織のたんぱく質が変性し、機能低下が起こったり、炎症が引き起こされる、ということが近年明らかになってきました。