ダイエットやメタボ対策の定番になった“緩やかな糖質制限”ロカボ。このロカボを提唱したのが糖尿病専門医の山田悟さんです。本連載では、「食べる喜びをしっかり味わいながら健康になる」ことが何よりも大事、と話す山田さんが、ロカボについて医学的根拠から説き起こし、わかりやすく伝えていきます。
今回のテーマは、読者の多くが気になる「お酒」。お酒は血糖値を上げる? いいえ、そうでもないのです。

前回と前々回は、外食やコンビニなどでロカボを実践する方法を紹介しました。今回は、読者の多くが気になるお酒(アルコール)についてお話ししましょう。
おいしくて楽しい食事には、お酒も欠かせません(もちろんお酒が飲める人が対象ですが)。外食でおいしいものを食べるときに、また、自宅で食事をしながらリラックスしたいときに、お酒を飲みたくなるという人は多いでしょう。私もそうです。
このお酒、血糖値という視点で見るとどうなのでしょうか。
「お酒を飲むと血糖値が上がる」と思っている人が多いと思います。となると、緩やかな糖質制限「ロカボ」を実践するなら、お酒は控えたほうがいいのでしょうか?
いえいえ、そんなことはありません。実は、アルコール自体は血糖値に関与せず、むしろ血糖値の上昇を抑える方向に働きます。詳しくは後でご説明しますが、問題となるのはお酒に含まれる糖質です。
1日当たりの糖質量を130g以内に抑えられればお酒もOKです! 実際、緩やかな糖質制限「ロカボ」を始めた方にご説明すると、「お酒を飲めるのがうれしい!」とよくおっしゃいます。
かつては「飲酒は血糖値を上げる」が常識だった?
私たち糖尿病治療に携わる医師もそう思っていました。かつて1990年代の日本糖尿病学会のガイドラインでは、「血糖値の管理が良好な人だけに限定して」飲酒を許可していました。おそらくは「お酒は血糖値を上げるのであろう。カロリーが血糖値の上昇に関与しているのだろう」という推測のもとに、医師たちも患者さんに飲酒制限などを指導していたという歴史があるのです。
ところが、近年、興味深い研究結果が報告されました。オーストラリアのブランド・ミラー先生たちの研究グループが、ビールと白ワイン、ジン、そして水を飲んだときの血糖値の影響を調べたのです(Am J Clin Nutr. 2007;85(6):1545-51.)。その結果が、アルコールは血糖値の上昇を抑えるというものだったのです。詳しく紹介しましょう。