腸はただの「管」じゃない! その驚くべき働きとは?
栄養の吸収、免疫、ホルモン産生など「脳」に匹敵する器官
柳本 操=ライター
腸が健康に密接に関わっていることは「腸活」ブームでなんとなく理解しているけれど、そもそも腸は日々、どのように働き、私たちの健康に役立っているのだろう。
一般に知られている「消化や吸収」以外に、腸には複雑かつダイナミックな生命維持のための働きがあることが解明されてきた。その一方で腸の病気は増えており、中でも潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸が傷ついてただれる「炎症性腸疾患」は、ここ30年間で10倍以上に増加したという。腸の驚くべき働きと腸の健康を損なう病気、さらには腸の病気を早期発見するための検査法について、炎症性腸疾患治療の第一人者である東京医科歯科大学理事・副学長の渡辺守さんに3回にわたって聞いた。
「腸の働きについて、説明できる?」と問われたら、あなたはどう答えるだろうか。
食べたものを消化し吸収し、不要なものを便にして排泄する…。ある意味では、これは正解。しかし、それだけでは答えとして不十分だ。「消化、吸収、排泄以外にも、腸には、特別で複雑な機能がたくさんあるのです。腸を守ることは、全身の健康維持にダイレクトにつながっています」と、東京医科歯科大学消化器内科教授で理事・副学長の渡辺守さんは言う。
さっそく、腸の働きについて見ていこう。
腸は「内なる外」、食物など外界からの刺激を日々受け続ける

私たちの口から肛門までは「1本の長い管」でつながっている。
食事をし、口の中でかみ砕かれた食べものや飲み物はすみやかに「食道」から「胃」へと送り込まれる。「胃」に到達した飲食物は胃液と混ぜ合わされて粥状になる。その後、「小腸」で胆汁、膵液などの消化液により完全に消化され、栄養成分は腸壁から吸収。残りの内容物は「大腸」へと送られ、少しずつ水分が吸収されて固形の便になり、排出される。
「口から食道、胃、腸、肛門まではそれぞれ形状や働きは異なるものの、切れ目なくつながっています。また、この1本の管は体の内側にありながら、外界に面していて、食物や細菌など外界の刺激を日々受け続けています。“内なる外”である、このことが腸の働きと密接に関わるのです」(渡辺さん)。
腸は脳よりも複雑!?
知って驚き(1)
腸の表面積は皮膚の200倍!
腸は外界に接する組織。「しかもその内側は、無数の細かなひだを持っています。くねくねと折り畳まれた腸のひだを開いて平面にすると、その総面積はテニスコート1.5面分、300平方メートルにも及びます」(渡辺さん)。
人間の体で外界に接している、というと皮膚が思い浮かぶが、実は皮膚よりも腸の方が外界との接触面積ははるかに広い。腸の表面積は皮膚の200倍にも及ぶのだ。腸の粘膜にびっしりと並んで生えている、じゅうたんの毛のような「腸絨毛(ちょうじゅうもう)」は5000万本。腸絨毛を覆う、たった1層の上皮細胞が、外界との境界となっている。
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