「コレステロールは控えめに」はウソ? 代謝メカニズムから見えてきた真の姿
コレステロールの摂取目標量はなぜ撤廃されたのか
村山真由美=フリーエディター・ライター
「油・脂肪は太る」「体に悪い」というこれまでの常識が、近年の栄養学の進化により変わりつつある。第1回では、油・脂肪は悪者ではなく、もっと摂取してもいいこと、そして油の摂取バランスについて解説した。 今回は、食事でとったコレステロール・油が、体の中でどのように利用されたり蓄積されたりするかを、脂質代謝に詳しい品川イーストワンメディカルクリニック理事長の板倉弘重さんに聞いていく。「体に脂肪がたまるのは、油のとりすぎが原因」と思いがちだが、話はそう単純ではない。そして、健康診断で多くの人がひっかかる「コレステロール値」の正しい見方も紹介していこう。
体脂肪の原因は「油のとりすぎ」だけじゃない?

私たちの体のなかにある油(脂質)といえば、まず、思い浮かぶのが体脂肪だ。体脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があり、とくに男性に多い内臓脂肪型肥満が生活習慣病を招きやすいことはよく知られている。
ミドル以上の多くが気にするこの脂肪。「体に脂肪がたまるのは、油のとりすぎが原因」―。そう思っていないだろうか。
体に脂肪がたまるのは摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスが悪く、体内にエネルギーが余るから。つまり、食べ過ぎや運動不足が原因だ。「脂質をとりすぎると体脂肪になりますが、それだけではなく、糖質のとりすぎも同様です」(板倉さん)
私たちが食事で取り入れた糖質は、小腸でブドウ糖に分解され、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられる。この状態が続き、貯蔵量がマックスになると余分なブドウ糖は中性脂肪として脂肪細胞に蓄えられるのだ。つまり、脂質だけでなく、糖質をとりすぎても体脂肪になるということを覚えておこう。

食事で取り入れた脂質や糖質をエネルギーに変えたり、いざというときに備えて蓄えたりするプロセスを脂質代謝、糖代謝というが、これがうまく働かないのが脂質異常症や糖尿病だ。
体脂肪が内臓にたまる内臓脂肪型肥満は、糖代謝や脂質代謝を悪くする。体脂肪の主な材料は脂質と糖質なので、これらを控えると、糖代謝だけでなく脂質代謝も改善することがわかっている。