残された腎機能を“長持ちさせる”ことはできる
第3回 慢性腎臓病の治療と予防
塚越小枝子=フリーライター
慢性腎臓病(CKD)は自覚症状が乏しいため、静かに進行し、ある日突然、末期腎不全と判明して透析療法が必要になることもある。こうした「いきなり透析」や、慢性腎臓病が進行することにより発症しやすくなる「脳卒中、心筋梗塞といった心血管疾患」の合併を防ぐためには、どんなことに気をつけたらいいのだろうか。長寿の時代に腎臓を“長持ちさせる”秘訣を、地域医療機能推進機構東京高輪病院院長の木村健二郎さんに聞いた。
腎機能の低下は生命の危機、症状が出てからでは遅い
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第3回 慢性腎臓病の治療と予防
残された腎機能を“長持ちさせる”ことはできる
気づかないうちに静かに進行していく慢性腎臓病(CKD)。尿たんぱくなどの腎障害(傷害)を示す兆候や、腎臓のろ過機能を示すGFR(糸球体ろ過量)(*1)が正常の60%未満(60 mL/分/1.73m2未満)に低下した状態が3カ月以上続けば、慢性腎臓病と診断される(第1回「腎機能の低下は生命の危機、症状が出てからでは遅い」参照)。
この状態で何もせずに放置すると、慢性腎臓病はどんどん進行し、腎臓の働き(GFR)が正常の15%未満(15 mL/分/1.73m2未満)にまで低下すると末期腎不全となる。腎臓の働きが低下するに従い、腎臓だけでは体内の環境を維持できなくなり、薬物療法や食事療法(状況に応じてたんぱく質、塩分、カリウム、リンなどの摂取量を制限する)が必要になる。それでも体内環境が維持できなくなると、透析療法(人工的に血液中の老廃物や余分な水分を取り除く方法)あるいは腎移植が必要になる。
「一般に、腎臓病というと“尿の異常”のイメージが強いようですが、血液をろ過する糸球体は毛細血管の集まりですから、慢性腎臓病は血管の病気です。慢性腎臓病は、動脈硬化の原因となる加齢や高血圧、糖尿病などを背景に発症することが多いのです。したがって、重症になればなるほど、末期腎不全になる危険のみならず心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を合併する危険も増すことも忘れてはいけません」と、地域医療機能推進機構東京高輪病院院長の木村健二郎さんは言う。
元となる生活習慣病をしっかり治せば悪化が抑えられる
こうした事態に陥る前に、自分の努力で腎臓の状態を改善することはできるのだろうか。
「まずは慢性腎臓病の背景をよく見極める必要があります。生活習慣病が原因となっているものは、それらをしっかり治せば悪化が抑えられる、あるいは良くなる可能性もあります」(木村さん)
第1回でも解説したように、慢性腎臓病の原因は、腎臓自体の病気、腎毒性のある薬剤の長期使用、加齢、喫煙、生活習慣病などさまざまだ(図1)。
腎臓に炎症を起こす慢性糸球体腎炎は、ステロイドなどを使って腎臓の炎症を抑える専門的な治療を行うが、生活習慣病を背景に起こってくる慢性腎臓病の場合、元となっている生活習慣病そのものを治療することが第一だ。