失敗こそ「心に潜む盲点」に気付くチャンスだ【ガイ・ウィンチ氏】
「NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法」著者インタビュー(3)
柳本操=ライター
あらゆる分野で先陣を切る登壇者がそのアイデアを世界に広める「TEDトーク(TED Talks)」において、「感情にも応急手当てが必要」と題したプレゼンテーションが430万回以上再生されているのが、心理学者、ガイ・ウィンチさん。来日したガイさんに、私たちが忘れがちな“心の傷”の手当ての大切さ、悩み多き現代人が自らを癒やすヒントについて聞いた(第1回は「なぜ心の傷に応急手当てが必要か」、第2回は「『苦しいときは話すことが大切』はウソだった!」)。
失敗したとき、なぜ自分をさらに追い込んでしまうのか

ガイ・ウィンチさんは、著書『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法(原題:EMOTIONAL FIRST AID)』で合計7つの「心の傷」を取り上げ、それぞれの傷の症状、特徴、そしてすぐに実践できる気持ちの切り替え方などの「手当ての方法」を解説している。
ガイさんが著書で取り上げている7つの心の傷
- 「自分を受け入れてもらえなかったとき」――失恋、いじめ、拒絶体験
- 「誰ともつながっていないと感じるとき」――孤独
- 「大切なものを失ったとき」――喪失、トラウマ
- 「自分が許せなくなったとき」――罪悪感
- 「悩みが頭から離れないとき」――とらわれ、抑うつ的反芻(はんすう)
- 「何もうまくいかないとき」――失敗、挫折
- 「自分が嫌いになったとき」――自信のなさ、自己肯定感の低下
7つの心の傷が著書では取り上げられていますが、このなかで、現代の大人たちに最も多く起こりがちな傷を一つ選ぶとしたら、何でしょうか?
ガイさん 6つめの心の傷、「失敗、挫折」は最も一般的で、起こる頻度も多いものだと思います。失敗や挫折は、誰の人生にもつきものですが、失敗にどう反応するかは人によって違うのです。例えば、
- どうせ手の届かない目標だと思い、投げ出す
- 無力感に襲われて動けなくなる
- 成功するまであきらめずに挑戦し続ける
- 失敗のストレスと恥ずかしさで我を失ってしまう
というふうに。
どう反応するかは、人それぞれで、ケースごとに異なります。しかし、知っていてほしいのは、とはいえ、失敗することがときには心に大きな傷を残し、放置すると深刻な症状を引き起こすことがあるということです。
「TEDトーク」でガイさんがおっしゃっていた、「心や感情は自分が思うほど信頼のおける友ではありません。彼らは実に気分屋で、強い心の支えになってくれるかと思えば、次の瞬間には実に嫌な奴になります」というお話が印象的でした。失敗したときにも、心が“嫌な奴”になることがあるのですか?
ガイさん そうです。失敗、という心の傷ができると、私たちが意識しないうちに、次のような3つの症状が起こります。