血糖値コントロールの極意は「ゆるい糖質オフ」、そして「カーボラスト」
糖尿病専門医が、診療の場でアドバイスしている生活改善のコツとは
柳本 操=ライター
予備群を合わせると2050万人いると推定されている糖尿病。発症すると目や神経、腎臓などの合併症を招き、心筋梗塞や脳卒中など死に直結する病気が増える恐ろしい病気だ。しかも心筋梗塞などのリスクは予備群の段階から高まっている。このため「糖尿病の予備群です」と告げられたら、すぐに行動する必要がある。医療機関を受診するのはもちろん、日々の生活習慣改革は必須だ。
では、具体的に生活習慣をどう変えて行けばいいのだろうか。糖尿病専門医として日々患者と向き合っている岩岡秀明さんに、忙しい生活の中で血糖値コントロールを可能にする“コツ”を聞いていく。
生活習慣を見直せば、予備群から正常な状態に戻すことも可能
特集の第1回では、「糖尿病予備群」の段階でも心筋梗塞リスクが高くなるという事実、第2回では糖尿病予備群を放置すると何が恐いのかをお伝えした。
健康診断などで「糖尿病の予備群ですね」などと言われても、凹んでいる暇はない。予備群の段階からすぐに行動を始めることが肝要だ。それによって、その後の人生が大きく変わってくる。

糖尿病治療を専門とする船橋市立医療センター(千葉県船橋市)代謝内科部長の岩岡秀明さんは、「予備群の段階であればまったく自覚症状はありません。しかし、予備群という状態を甘くみて、それまでの生活パターンを変えないでいると、徐々に血糖値が高くなり、本物の糖尿病になってしまいます。また、糖尿病を発症する前の段階でも、糖尿病の合併症のひとつである動脈硬化は進行し、心筋梗塞を起こすリスクが高まります。すぐにでも対策を始めることが大切です」と話す。
ひとたび糖尿病となると、生活は一変してしまう。
本物の糖尿病になるとどのような状態になるのか。高血糖状態が続くと体内の栄養やエネルギーが消耗されて体重が減少し、やつれてくる。喉や口が渇き、尿が頻繁に出て、だるくて疲れやすくなる。勃起障害が起こったり、足のしびれ、視力低下などの症状も出てくる。「しめじ」といわれる神経障害、網膜症、腎症といった3大合併症は、一度表れると長期間かけて進行していく。その行き着く先は前回の記事で紹介した通りだ。
また、糖尿病治療のための食事療法や運動療法も、厳格なものとなる。定期的な通院の頻度も高まる。このように、時間的、経済的な負担が増え、生活はがらりと変わってしまうのだ。そうなる前に、予備群の段階から対策を始めることが後悔しないために極めて重要だ。「予備群になっても、食事・運動などの生活習慣を見直せば、予備群の状態でとどめるのはもちろん、正常な状態に戻すことも可能です」(岩岡さん)
「そうはいっても忙しい生活の中で、できることは限られている。できることならやりたいけど、時間が…」という人も少なくないだろう。そこで今回は、糖尿病予備群の状態にある人のリアルな現実を把握している岩岡さんが、実際に診療の場でアドバイスしている生活改善のコツを紹介していく。