糖尿病の“予備群”でも「心筋梗塞などの死亡リスクが2倍」の衝撃
こんな人は糖尿病予備群になりやすい! 日本人はリスク大
柳本 操=ライター
予備群を合わせると2050万人いると推定されている糖尿病。発症すると目や神経、腎臓などの合併症を招き、心筋梗塞や脳卒中など死に直結する病気が増える恐ろしい病気だ。「一度発症すると基本的に完治はしない」と言われることもあり、多くの人にとって最もかかりたくない“怖い病気”の1つとなっている。
ところが糖尿病は、進行するまで目立った自覚症状が出ない。このため健診で「糖尿病の予備群ですね」と告げられても、「もう少し様子を見ても大丈夫かな…」と放置してしまう人が後を絶たない。本特集では、糖尿病予備群のリスクと、放置すると何が怖いのか、そして忙しい生活の中で血糖値コントロールを可能にする方法を糖尿病専門医の岩岡秀明さんに聞いていく。
「糖尿病の一歩手前、予備群ですね」と健診で告げられたが、特に目立った自覚症状はない。「今は忙しいし、まあすぐに悪くなることもないだろう」と、そのまま放置してしまった――。こんな方は少なくないのではないだろうか。
だが、そのまま放置しておくと、糖尿病に向かってまっしぐら。症状が進むとさまざまな合併症を引き起こす。さらに、近年の研究では、糖尿病と診断される一歩手前の“糖尿病予備群”の状態でも、突然死につながる危険性が高まることもわかってきている。
糖尿病治療を専門とする船橋市立医療センター(千葉県船橋市)代謝内科部長の岩岡秀明さんは、「自覚症状が出ないため、病院での治療を怠ったり、生活改善を先送りしたりする人が多くいます」と、危機感を隠さない。「特に働き盛りの40~50代は、忙しいからという理由で“糖尿病予備群”という言葉を甘く見がちであることが非常に問題だと感じています」(岩岡さん)
糖尿病患者はいまだ増加中!
平成24年(2012年)の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病)」は950万人、「糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)」は1100万人に上ると推定されている。両者を足すと2050万人に達する。糖尿病が強く疑われる人(糖尿病)は増え続けている。糖尿病予備群は、2012年で若干の減少に転じたが、依然として高水準を維持しており、1997年と比較すると2倍近い。岩岡さんも「日々、患者さんと接しているなかで、糖尿病にかかる人は確実に増えていると感じます。予備群についても、現場の感覚では減っているという印象はありません」と話す。
男女別に見ると、「糖尿病が強く疑われる者(糖尿病)」は男性15.2%、女性が8.7%。「糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備群)」は男性12.1%、女性13.1%となっている。特に男性は、「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」を合わせると、何と3割近くの人が該当する。
糖尿病のリスクは確実に高まっている。だが、医療機関での治療に結びつかないケースが後を絶たないのが現状だ。岩岡さんは「予備群と言われても放置している人が多くいます。早期に糖尿病と診断され、一度は医療機関を受診したケースでも、通院を中断してしまう人が多いのです。予備群や糖尿病の初期段階では、自覚症状がないことが影響しているのでしょう。それに『仕事が忙しい』という理由で病院から足が遠のくこともありますが、最大の理由は『糖尿病の本当の怖さを認識できていない』ことにあります」と話す。
まずは糖尿病のリスクを正しく認識する。そして、予備群や初期の糖尿病と診断されたら、医療機関に赴き、すぐに血糖値コントロールを始めることが極めて重要だ。