ストレスチェックを機に「最強の自分」を作る方法
第15回 自分の弱点を知り、他者との関係作りに生かそう
奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
自分の弱点を知り、他者との関係作りに生かす

最後に「ストレス反応への影響因子」のチャートを見てみましょう。このチャートには、「上司」「同僚」「家族や友人」からのサポート度と「仕事や生活の満足度」が示されています。当然ながら、上司や同僚のサポートが高ければ職場のストレスは緩和されやすくなりますし、家族や友人のサポートがあればプライベート時間で緊張や不安が癒やされるためストレス症状が和らぎます。その逆に職場や家庭のサポートが低ければ低いほど、ストレス度は高まりやすく、心身の不調が表れやすくなります。
他者との関係は一朝一夕に変えることはできませんが、自分の人間関係の状況に気付きを得ることで、少しずつ補強していくことができます。例えば筆者の場合は、組織に所属せず、精神科医と嘱託産業医をフリーランスに近い形で行っているため、上司や同僚という固定の人間関係がなくてどうしてもサポート度は低くなっています。そのことを自覚しているため、同業者の知り合いを意識的に増やして相互にアドバイスし合える関係性の構築を心がけることでカバーしています。
知人で一人暮らしのキャリア女性は、兄弟がおらず年老いた両親も遠方に住んでいるために家族からのサポート力が乏しいと自覚しています。そのため自分から友人を誘って食事会を企画したり、仕事が忙しい時でもメールや電話で友人とコンタクトをとることを心がけたりしているそうです。
人間関係にとどまらず、職場やプライベート生活全体の満足度も、ストレス緩和に大きく関係してきます。ストレスチェックの受検をきっかけに、満足度が低い方は、「何に対して不満なのか」「何が改善すれば満足度が上がるのか」といった観点で、仕事やプライベート生活をじっくり見直してみることをお勧めします。職場とプライベートに分けて、「満足していないこと」「それを改善するためにできること」などと紙に箇条書きにして書き上げていくと自分の心の整理と洞察がやりやすくなるのでお勧めです。
以上、2回に分けてストレスチェックのチャート別の見方と有効活用法をご提案しました。高ストレス状態と認定されなかった方でも、必ず何らかのストレスを抱えて仕事をしています。ご自身のストレス状態に気付き改善に結びつけるツールとして、ストレスチェックを上手に活用してください。
こちら「メンタル産業医」相談室
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精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
