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実は「無」にならなくていい。マインドフルネス瞑想の本当のコツ

「無常」を体験することで心がラクになる効果が…

 次々と生まれる感情や思考は、流れる水のごとく心にとどまることはない。ふと気が付けば数分前とは全く違うことを考えている。そんな体験を瞑想で繰り返していくことによって、次第に日々の生活の中でも己の感情や気持ちに執着したりこだわり過ぎたりしている自分に気づき、ネガティブな感情にとらわれにくくなっていくのだと私自身は捉えています。

自分を苦しめる「過剰な欲」を手放す

 またもう一つ瞑想を行う上で理解しておくとよいのが、「苦しみの根本が渇愛である」という考え方。ブッダは全ての心の苦しみの根っこは、「欲を求めてやまない気持ち」つまり「渇愛」であると説きました。

 「もっと豊かになりたい」「もっと楽しみたい」「もっとおいしいものを食べたい」「もっと認められたい」「もっと賞賛されたい」などと、今の自分の状況に満足できずに人間は果てしない欲望を持ち続ける。しかしその欲がかなわない場合には、「怒り」や「悲しみ」が生まれる。もしその欲がかなわなければどうしようと「イライラ」や「焦り」を覚える。また「欲」が手に入ったら入ったで、それがなくなったらどうしようと考えて、未来への「恐れ」「不安」が生まれる。自分が欲しいものをたくさん持っている人に対しては「嫉妬」が生まれる。

 こうした欲を追い求める渇愛の気持ちがもとになって、自分で自分を苦しめる思考や感情を生み出しているのだと、ブッダは見抜いたのです。そして瞑想で心を見つめ、己を苦しめる渇愛に気づき、過剰な欲は手放していきましょうと説いたのです。

瞑想をすると、過剰な欲を手放せるかも。写真はイメージ=(c)Nataliya Hora -123RF

 確かにヴィパッサナー瞑想をしていると、次々と思考や感情が湧いてくる経験を繰り返します。瞑想中に己を苦しめている過剰な欲(渇愛)の部分に気づき、それを日々の生活の中で少しずつ手放していこうと努力することが、心が徐々に成長し落ち着く効果につながっているように筆者自身は感じています。

 ちなみに筆者は「全く欲を持つな」と極端に解釈するのではなく、「足るを知る」「過ぎた欲は身を滅ぼす」という言葉でも表現されるように、自分にちょうどよい程度の「ほどほどのさじ加減」を自分自身で見つけていくことが大切なのではないかと考えています。

 以上、前回、今回と2回にわたってタイの洞窟救出劇を考察しながら、マインドフルネス瞑想について再考してみました。洞窟で発揮されたエカポンコーチの素晴らしいリーダーシップや瞑想指導力は、彼が長年かけて修行でブッダの教義を深く理解しながら日々の生活で瞑想を実践していたが故に発揮されたものだと考えて間違いないでしょう。彼ほどの瞑想修行は難しいながらも、マインドフルネス瞑想を実践することで、私たちも心の安定やストレス耐性の獲得を目指したいものですね。

(図版制作:増田真一)

こちら「メンタル産業医」相談室

第26回 タイ洞窟救出劇から マインドフルネス瞑想を考える
第25回 89歳医師に学ぶ! 生涯現役を続けるしなやかな「メンタル力」
第24回 「隠れ疲労」の兆候を感じたら、何も予定を入れない休日を
第23回 梅雨の隠れ疲労、放置すると「夏うつ」? 解消する3つのヒント
第22回 会社の健康診断、「今年はパス」はアリ?
奥田弘美(おくだ ひろみ)さん
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント
奥田弘美(おくだ ひろみ)さん 1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内20カ所の産業医として働く人を心と体の両面からサポートしている。著書には「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。

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