日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > からだケア  > こちら「メンタル産業医」相談室  > 実は「無」にならなくていい。マインドフルネス瞑想の本当のコツ  > 3ページ
印刷

こちら「メンタル産業医」相談室

実は「無」にならなくていい。マインドフルネス瞑想の本当のコツ

「無常」を体験することで心がラクになる効果が…

 次々と生まれる感情や思考は、流れる水のごとく心にとどまることはない。ふと気が付けば数分前とは全く違うことを考えている。そんな体験を瞑想で繰り返していくことによって、次第に日々の生活の中でも己の感情や気持ちに執着したりこだわり過ぎたりしている自分に気づき、ネガティブな感情にとらわれにくくなっていくのだと私自身は捉えています。

自分を苦しめる「過剰な欲」を手放す

 またもう一つ瞑想を行う上で理解しておくとよいのが、「苦しみの根本が渇愛である」という考え方。ブッダは全ての心の苦しみの根っこは、「欲を求めてやまない気持ち」つまり「渇愛」であると説きました。

 「もっと豊かになりたい」「もっと楽しみたい」「もっとおいしいものを食べたい」「もっと認められたい」「もっと賞賛されたい」などと、今の自分の状況に満足できずに人間は果てしない欲望を持ち続ける。しかしその欲がかなわない場合には、「怒り」や「悲しみ」が生まれる。もしその欲がかなわなければどうしようと「イライラ」や「焦り」を覚える。また「欲」が手に入ったら入ったで、それがなくなったらどうしようと考えて、未来への「恐れ」「不安」が生まれる。自分が欲しいものをたくさん持っている人に対しては「嫉妬」が生まれる。

 こうした欲を追い求める渇愛の気持ちがもとになって、自分で自分を苦しめる思考や感情を生み出しているのだと、ブッダは見抜いたのです。そして瞑想で心を見つめ、己を苦しめる渇愛に気づき、過剰な欲は手放していきましょうと説いたのです。

瞑想をすると、過剰な欲を手放せるかも。写真はイメージ=(c)Nataliya Hora -123RF

 確かにヴィパッサナー瞑想をしていると、次々と思考や感情が湧いてくる経験を繰り返します。瞑想中に己を苦しめている過剰な欲(渇愛)の部分に気づき、それを日々の生活の中で少しずつ手放していこうと努力することが、心が徐々に成長し落ち着く効果につながっているように筆者自身は感じています。

 ちなみに筆者は「全く欲を持つな」と極端に解釈するのではなく、「足るを知る」「過ぎた欲は身を滅ぼす」という言葉でも表現されるように、自分にちょうどよい程度の「ほどほどのさじ加減」を自分自身で見つけていくことが大切なのではないかと考えています。

 以上、前回、今回と2回にわたってタイの洞窟救出劇を考察しながら、マインドフルネス瞑想について再考してみました。洞窟で発揮されたエカポンコーチの素晴らしいリーダーシップや瞑想指導力は、彼が長年かけて修行でブッダの教義を深く理解しながら日々の生活で瞑想を実践していたが故に発揮されたものだと考えて間違いないでしょう。彼ほどの瞑想修行は難しいながらも、マインドフルネス瞑想を実践することで、私たちも心の安定やストレス耐性の獲得を目指したいものですね。

(図版制作:増田真一)

こちら「メンタル産業医」相談室

第26回 タイ洞窟救出劇から マインドフルネス瞑想を考える
第25回 89歳医師に学ぶ! 生涯現役を続けるしなやかな「メンタル力」
第24回 「隠れ疲労」の兆候を感じたら、何も予定を入れない休日を
第23回 梅雨の隠れ疲労、放置すると「夏うつ」? 解消する3つのヒント
第22回 会社の健康診断、「今年はパス」はアリ?
奥田弘美(おくだ ひろみ)さん
精神科医(精神保健指定医)・産業医・労働衛生コンサルタント
奥田弘美(おくだ ひろみ)さん 1992年山口大学医学部卒。精神科医および都内20カ所の産業医として働く人を心と体の両面からサポートしている。著書には「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 熱中症・かくれ脱水を防ぐ「水分補給」「マスク着用」のコツNEW

    脱水症やその一歩手前の「かくれ脱水」とはどういうもので、なぜ様々な病気につながるのか、脱水症はどんな人がなりやすく、どう予防すればいいのか。夏の今こそ知っておきたい、脱水症の怖さと対策について紹介する。さらに、夏期におけるマスク着用の注意点についても解説する。

  • かかると怖い!「膵炎」「膵がん」

    激痛に襲われる「急性膵炎」や、発見しにくく5年生存率が極めて低い「膵がん」など、膵臓の病気には厄介なものが多い。今回は、膵臓という臓器の役割や、膵臓の代表的な病気である「膵炎」「膵がん」の怖さ、早期発見のコツをまとめていく。

  • 60代以降で急増! 男を悩ませる前立腺の病気

    中高年にさしかかった男性にとって、病気が心配になる臓器の1つが「前立腺」だ。前立腺の病気のツートップ、前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.