知らないでは済まされない!「ストレスチェック」と「健診」の決定的違い
こちら「メンタル産業医」相談室(13)
奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
1. 過重労働など高負荷の業務のために高ストレス状態になっていたパターン
事例 業務量が多く長時間残業に加え、部下の報告をとりまとめるために連日「持ち帰り仕事」もしていた中間管理職のAさん。過労により胃腸障害やめまいが出現し始めていた。面接後の報告を受け、会社は上長とともに業務量を早急に見直し軽減した。また部下の報告のとりまとめは翌日の勤務内で行うようにルールを変更。Aさんには筆者より医療機関への受診を促し、当面の間は残業を大幅に制限し体調回復を図ってもらうことになった。Aさんの業務量、残業時間とも軽減し、加療により体調も改善した。
2. 人間関係が原因で高ストレス状態となっていたパターン
事例 半年前に異動した部署の上司からキツい言葉や態度でパワハラ的指導を受け、抑うつ状態や不眠など、メンタル不調の症状が出ていた社員Bさん。面接後の報告を受けて会社はすぐにヒアリングを行い、上司には厳重注意。Bさんには筆者から紹介状を書き、メンタルクリニックを受診してもらったところ2カ月の自宅療養となった。Bさんは復帰後に異動となり、現在は元気に復職している。
3. 会社が知らなかった個人的要因により高ストレス状態となっていたパターン
事例 学生時代にスクールカウンセラーから「軽い発達障害かも?」と言われたことがあったが、本社での事務部門では問題なく適応できていたCさん。支店に異動後、来客応対や電話対応などマルチタスクを任されることになり、不適応状態に。夜眠れない、来客や電話がくると動悸(どうき)・吐き気がする、などの症状が出ていたため、筆者より業務内容の見直しと調整を会社に意見した。会社は支店長と相談し、来客・電話対応を免除し、事務仕事のみのシングルタスクに調整したところ症状は改善、再び業務に適応できるようになった。
「高ストレス」者は勇気を出して面接を受けて
筆者自身も2016年は手探りでストレスチェックに関わりましたが、振り返ってみると高ストレス者の面接指導をすることで、隠れていたビジネスパーソンの心の不調が発見でき早期対応につなげることができたと感じています。ストレスチェックの結果、高ストレスという結果が出た方は、ぜひ勇気を出して面接を受けてみることをお勧めします。

繰り返しますが、ストレスチェックは、自分が行動しないかぎり事態は何も変化しません。ストレスチェックは、体の健康診断と違って「受ける人の自主的な判断と行動」を求める度合いが高い制度です。これからストレスチェックを受ける方は、ぜひこうしたことをしっかり理解したうえで受け、ご自身の心の健康のために積極的に活用していただきたいと思います。次回は高ストレス状態でなかった人でもストレスチェック結果を活用できる方法を紹介する予定です。お楽しみに。
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精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
