日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > からだケア  > こちら「メンタル産業医」相談室  > 増える「パワハラ」による精神疾患、まず正しい知識を  > 3ページ
印刷

こちら「メンタル産業医」相談室

増える「パワハラ」による精神疾患、まず正しい知識を

第12回 こちら「メンタル産業医」相談室

 奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家

 「俺の言う通りしないんだったら、レギュラーを外すぞ」

 「このバカ! お前なんかチームのお荷物だ。お前なんか要らない!」

 と部活でコーチや監督から青年期にパワハラ指導された人が、管理職になってから

 「俺の言う通りにしないんだったら、査定を下げるぞ(または、クビにするぞ)」

 「このバカ! お前なんか課のお荷物だ。お前なんか要らない!」

 と自分の部下たちにやってしまうのです。

 昨今さすがに体罰はパワハラだと分かっている人は多いのですが、こうした言葉のパワハラには鈍感な人もいて、自分に「パワハラの世代間連鎖」が起こっていることに気が付かない場合があります。「自分がよかれと思って部下を厳しく指導していたら、人事にパワハラだと注意されて、懲戒処分を受けた」と落ち込んでしまい、パワハラした上司自身がメンタルを病んでしまったというケースにも産業医として遭遇したことがあります。

 もちろん部活だけではありません。子どもの頃に親から人格を否定されるような言葉で口汚く罵るようにしつけられた人は、大人になってから他人や自分自身の子どもに対して、同じようなパワハラを行ってしまうことが多いのです。虐待された子どもが親になって自分の子どもに虐待するケースがあるように、パワハラ言動も世代間で連鎖してしまうのです。

 ちなみに体育会系部活のすべてでパワハラ言動が行われているというわけでは決してありません。適切な言葉と態度で素晴らしい指導をされているコーチや監督も数多くいます。しかし教育現場ではスポーツ指導における暴力行為が以前から問題になっているのも事実です。文部科学省ではすでに「スポーツを行う者を暴力等から守るための第三者相談・調査制度の構築に関する実践調査研究協力者会議」が行われ、「スポーツ指導における暴力等に関する処分基準ガイドライン(試案)」が提案されています。お子さんが運動部に所属している方は、パワハラの連鎖が起こる環境で部活をしていないかどうか、一度チェックされてみることをお勧めします。

まずは基本的な知識を持つこと

 職場でも家庭でも部活でも厳しく指導することはもちろん時には必要ですが、「正してもらいたい行動に焦点を当てて指導する」「人格を攻撃したり否定したりしない」「執拗に過度に叱らない」「大勢の前で恥をかかせるような叱り方はしない」といった基本は押さえておく必要があります。

 「今はちょっと怒るとパワハラと騒がれるから面倒くさい」と嘆く中高年の方にも時々出会います。少子化で怒られ慣れていない大人が増えているのは事実ですし、全ての叱責や指導がパワハラになるわけではありません。適切な言葉と態度で行った指導は、実際の判例でもパワハラ認定されていません。

 パワハラの被害者、加害者にならないためには、まずは自分自身がパワハラの正しい知識を持つことが大切です。職場のあちこちでチェック機能が働くようになれば、パワハラの慣れ、パワハラの連鎖も防ぐことができると思います。


こちら「メンタル産業医」相談室

第11回 遅い夕食でも太りたくないなら、お勧めは「分割食べ」
第10回 太らない人が密かに実践している「3つの食習慣」
第9回 ストレス・疲労に負けない食事の基本は「赤黄緑を1:1:1」
第8回 連休の過ごし方に注意!「変化疲れ」が五月病の原因に【後編】
第7回 連休の過ごし方に注意!「変化疲れ」が五月病の原因に【前編】
第6回 過労死は「好きで仕事をしている人」こそ注意を
第5回 過労はサイレントキラー、気付かぬうちに体を蝕む
奥田弘美(おくだ・ひろみ)さん
精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
奥田弘美(おくだ・ひろみ)さん 1992年山口大学医学部卒。精神科臨床および都内18カ所の産業医として日々多くの働く人のメンタルケア・ヘルスケアに関わっている。著書は「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネジメントセンター)、「一流の人はなぜ眠りが深いのか」(三笠書房)など多数。日本マインドフルネス普及協会を立ち上げ日本人に合ったマインドフルネス瞑想の普及も行っている。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 熱中症・かくれ脱水を防ぐ「水分補給」「マスク着用」のコツ

    脱水症やその一歩手前の「かくれ脱水」とはどういうもので、なぜ様々な病気につながるのか、脱水症はどんな人がなりやすく、どう予防すればいいのか。夏の今こそ知っておきたい、脱水症の怖さと対策について紹介する。さらに、夏期におけるマスク着用の注意点についても解説する。

  • かかると怖い!「膵炎」「膵がん」

    激痛に襲われる「急性膵炎」や、発見しにくく5年生存率が極めて低い「膵がん」など、膵臓の病気には厄介なものが多い。今回は、膵臓という臓器の役割や、膵臓の代表的な病気である「膵炎」「膵がん」の怖さ、早期発見のコツをまとめていく。

  • 60代以降で急増! 男を悩ませる前立腺の病気

    中高年にさしかかった男性にとって、病気が心配になる臓器の1つが「前立腺」だ。前立腺の病気のツートップ、前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.