遅い夕食でも太りたくないなら、お勧めは「分割食べ」
第11回 太らない人の食習慣を活用してメタボを予防する
奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
子どもの頃は実は自然にできていた!?
実はこの「その1」と「その2」の習慣をつけることは、難しいことではありません。誰もが子どもの頃は持っていたはずの、自然でかつ合理的な太らないための食事習慣です。
子どもを育てた経験のある方に尋ねると、「そうそう、子どもっておなかがすいていないと大好きなケーキやハンバーグでも残すわよね」「しかもおなかがちょっと満たされると遊びに行っちゃうし」とうなずかれます。私も2人の男児の子育てを経験しましたが、2人とも見事に幼少時からこの食習慣を持っていました。「もったいないから最後まで食べたら?」と小言を言ったら、「これ以上食べたらおなかがパンパンになって苦しいよぉ!」と怒る始末。「そうか、人は本来、おなかがパンパンになることを苦痛だと捉えていたんだな」としみじみ感動したことを覚えています。
ちなみに私はこの食習慣を彼らにキープさせるように心がけているので、長男次男とも青年期に入っても痩せ過ぎず太り過ぎずの健康的な標準体重をキープしています。
現在中年太りで悩んでいる人の多くも、子ども時代は太っていなかったはずです。それが大人になっていく過程で、本来人間に備わっていた太らないための食事習慣が何らかのきっかけで崩れてしまい、じわりじわりと太ってしまったという方が非常に多いのではないでしょうか。
例えば、結婚したために「おなかがすいてなくても、せっかく妻が作ってくれた食事を食べないと悪い」「残すと機嫌が悪くなるから」と、空腹や腹8分目を無視して食べるようになり太ってしまったということもよく耳にします(いわゆる幸せ太り)。また産業医としてよくお目にかかるのが、残業で遅くなったり接待が続いたりで、夜遅くに夕食を食べてすぐに寝てしまうというパターンです。
しかし、その3の「夜寝るまでの2~3時間は何も食べない」も、太らないようにするための非常に重要な習慣です。食べてからすぐ眠ると、最も血糖値が高い状態のときに最も代謝が落ちる睡眠状態となってしまい、食べたものがどんどん脂肪化されていってしまうので注意しましょう。
帰宅が遅くなる場合は「分割食べ」
私は、繁忙期などでどうしても夕食が遅くなってしまうというビジネスパーソンには、まず「帰宅が午後9時以降になると分かった時点で、帰宅前に潔く夕食を食べてしまいましょう」とお伝えしています。多くの方が出前やコンビニや外食店を活用すれば食べ物を調達することは可能でしょう。
どうしても家で食べたいと言われる方には、「分割食べ」をお勧めしています。まず午後7時ぐらいに主食のおにぎりやパンなどを食べておきます。すると血糖値が上がるため、脳にエネルギーが供給されサクサクと仕事が進みます。空腹を我慢してイライラしながら残業しているより、よほどメンタル的にもパフォーマンス的にも効果的です。そして、残業後帰宅してから、糖質と脂肪をできるだけカットした「あっさりした赤グループと緑グループのメニュー」を腹5分目程度まで食べるのです。もう眠るだけなので、腹5分目程度に抑えておいても何の問題もないはずです。
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