実は多い「上司がストレス」、部下との会話で意識すべきこと
第21回 残念なコミュニケーション・エラーを減らすために
奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家
三寒四温も落ち着き、春らしい陽光を満喫できる日々が増えてきました。あなたの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。今回は、コミュニケーションについて触れたいと思います。
コミュニケーション・エラーの蓄積がストレスを生む

現在私は約20の会社の嘱託産業医として様々なメンタル相談に応じていますが、その中でも「上司との関係性」に悩む社員さんが非常に多いと感じています。
彼らは「上司と合わない」「上司が苦手」「上司がストレス」と異口同音に訴え、かなり深刻に悩んでいます。ひどいときはそのストレスが高じて不眠や動悸(どうき)、体調不良を引き起こしたりします。
詳しく状況を確認していくと、中には明らかなパワハラ事案もありますが、そこまで至らない状況もよくあります。例えば…
「業務に悩んで相談しているのに、『やるしかないだろ』と突き放される」
「上司が話を聞いてくれず、一方的に意見を押し付けてくる」
「とにかく成果を上げろ、頑張れ、と言うだけで、具体的に教えてくれない」
「いつもではないが、機嫌が悪いと感情的になるし、言い方がキツくなるので傷つく」
こういった状態はいわゆるパワハラレベルではありません。いくつかのコミュニケーション・エラーが重なることで、部下の社員にストレスをもたらしているのです。
多くの場合、人事部の人に確認しても、上司のパーソナリティーに特別に「難アリ」というわけではありません。
「サバサバした明るい人ですが、コミュニケーションが雑なタイプなんですよね」とか、
「どちらかというと職人気質で、無口なタイプ。とっつきにくいのかもしれません」とか、
「いわゆる親分肌(姉御肌)で熱血漢なんですよね。合う人には合うのですが…」といった評価が返ってきたりします。
もちろん「相手の人格を否定する言葉を使って大勢の前で罵る」「個人への非難メールを部署の全員にCCを付けてあからさまに送りつける」といった明らかなパワハラ行為は言語道断ですが、他意のないコミュニケーション・エラーの積み重ねによる人間関係ストレスでメンタル不調が起こるのは、非常に残念に思います。
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