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こちら「メンタル産業医」相談室

長時間労働を削減できる会社、医師が見た3つの共通点

問われる「トップの本気度」

 奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家

(1)会社のトップが本気で残業削減に取り込むと宣言している

 経営陣が長時間労働による社員の健康被害や生産能力低下のリスクが計り知れないことや、過労死が発生した場合の訴訟リスク、違法な労働状態を摘発された場合の企業イメージの低下が人材確保困難に直結することなどをよく理解していて、固い決意の下、先頭に立って改革を推し進めている。

 逆に売り上げ・利益が減ることを極度に恐れるあまり、現状を変えようとせず口先だけで「残業を減らせ」と唱えている経営陣や、「うちの社員は仕事が楽しくて自ら長時間働いているのに、法律がそれを邪魔するなんてけしからん」と社員の本音と建て前を勘違いしている経営者の下では、社員はそれを敏感に察知しますので、長時間労働を減らすアクションが起きません。そうした会社では、ノー残業デーが設定されてもすぐに形骸化しますし、夜になると社屋を消灯して社員を追い出しても持ち帰り残業が発生するだけです。

(2)人事担当者が長時間労働部署へのヒアリングに基づき、具体策を実行している

 仕事量や体制が変わらないのに、ただ「残業を減らせ」「休日出勤を減らせ」と言うだけでは、現場は混乱するばかりです。人事担当者が中心になって、現場の上長、そして長時間労働をしている社員一人一人にヒアリングをして原因をまず洗い出す。そして、具体的な対策を立ててアクションを起こしているところが実際の成果を上げています。

 例えば、ある部署では、部署長がクライアントから契約を切られたくないため、先方からの突発的な要求をすべて丸飲みして臨時仕事を増やしていました。そのために現場のスケジュールが乱れ長時間労働が発生していました。人事担当者からの報告を聞いた経営者が部署長を呼び、「○○と○○のような要求は今後受けなくてもよい。それで契約が切られるようならそれでも構わない」と言ったことで、長時間労働の発生が抑制されたケースがありました。

 また業務が下流工程であるため、繁忙期には午後6時以降に作業が発生しがちだという部署には、思い切って繁忙期のみインターバル制(退社から次の出勤まで最低11時間空けること)やフレックス制を導入した企業もあります。それによって社員は最低限の休息と睡眠時間を確保できたため、体調を崩す人が激減しただけでなく、総労働時間も例年よりはるかに抑えることができました。

(3)一度きりではなく、継続的に残業状況をウオッチして対策を見直す

 一時的に残業が抑制されても、ちょっとバランスが崩れると再び長時間労働が発生してしまうことが中小企業ではしばしばあります。経営者や人事担当者が各部署の残業状況に目を光らせ、再び上昇カーブを描いてきたら、早めにヒアリングし、ミーティングを行って対策を立てるといったことも、残業削減が成功している会社では共通して行われています。

 例えばある出向型のIT関連企業では、出向先の会社の現場リーダーが変わったことで、再び長時間残業が発生し始めました。社員にヒアリングすると、その新リーダーの作業スケジュール感に無理があることが原因のようでした。そこで経営者が直接、出向先の企業に申し入れをしたことでスケジュールが再度見直され、長時間労働が速やかに改善しました。

 そのほか小規模な中小企業の中には、長時間労働が発生するたびに社長自らが過重労働者やその上司と面談を行い、その都度解決策を相談しているという会社もあります。

 以上のような共通点を眺めてみても、長時間労働撲滅のためには、個人個人の努力に頼るのではなく、強力なトップダウンの大号令の下、会社ぐるみで中長期的に取り組む必要があることは明らかです。

 厚生労働省の「平成28年版過労死等防止対策白書」の第1章第2節「労働・社会面からみた過労死等の状況」では、所定外労働(残業)が発生する理由を企業側、労働者側の双方からアンケート調査しています(*1)。

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 まず企業側の理由としては、「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要があるため」「業務量が多いため」「仕事の繁閑の差が大きいため」「人員が不足しているため」がトップ4でした。

 労働者(正社員〔フルタイム〕)側からの所定外労働が必要となる理由を見ると、「人員が足りないため(仕事量が多いため)」「予定外の仕事が突発的に発生するため」「業務の繁閑が激しいため」「仕事の締め切りや納期が短いため」の順でトップ4となっています。

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