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こちら「メンタル産業医」相談室

「次の異動先は…」 不本意な人事に悩んだときの心の切り替え方

第39回 人事でメンタル痛めない心の整理法

 奥田弘美=精神科医(精神保健指定医)・産業医・作家

 暖かな春の訪れが待ち遠しい2月、皆さまの心と体はお元気でしょうか? こんにちは、精神科医・産業医の奥田弘美です。

 さて今回は、「不本意な異動を命じられたとき」をテーマに書いてみたいと思います。

「次の異動先は…」。上司が口にした部署名を聞いて胸が潰れそうに。こんなとき、どうすればいいのでしょう。写真はイメージ=(c) Aleksandr Davydov-123RF

 ビジネスパーソンにとって不本意な異動を命じられたときというのは、人生の大きなストレス状態の一つです。当然ながらメンタルを病むリスクが高まります。実際、私自身も産業医・精神科医として、不本意な異動を命じられたことが原因で一時的にメンタル不調になった人と面談をしたことが何度もあります。

 彼ら・彼女らは、異口同音に「自分が望んでいなかったのに、異動させられて落胆している」「新しい仕事(部署)は、自分のキャリアプランに合わない」といったことを口にします。なかには「会社に行くのが憂うつで、つらくて涙が出る」といった抑うつ気分や「夜、眠れない」といった不眠症状が出現していることもあります。

 医師としてできることは、こうした症状に対しては可能な限り楽になるような医療(薬物療法やカウンセリング)を提案しつつ、本人が何らかの「気持ちの落としどころ」を見つけ、「気持ちの切り替え」ができるように心の整理のサポートをしていくことです。

 たとえ不本意な異動であったとしても、心を整理できて、気持ちの落としどころが見つかると、また前を向いて頑張っていける人はたくさんいます。そのためにも、まずは異動という命令が下った事実に対して、自分自身が「そういうことだったら致し方ない」と納得できる理由を見つけることが、気持ちを切り替えていく第一歩となるように思います。

異動の理由を知ることから

 不本意な異動を命じられて、もんもんと悩む人のなかには、異動の理由がはっきり認識できていないことが多々あります。その場合は、まずは人事や上司の方に「なぜ自分が異動を命じられたか」の理由を可能な限り尋ねてみることをお勧めします。

 私は産業医として人事の方からも話を伺う機会がよくありますが、会社が異動を考えるにはやはりそれなりの理由が存在します。まずすべての異動は、組織にとって最大のパフォーマンスを発揮し利益を上げることを期待して行われています。そのため個人の希望やキャリアプランを優先してもらえないというのは、組織に所属している以上はある程度やむを得ません。

 そのあたりを組織人としてしっかり踏まえたうえで、「今回の異動をなぜ命じられたか?」について、冷静に理由を尋ねてみてはいかがでしょうか?

 例えば会社側は次のようなポジティブな理由で異動を命じていることはよくあります。

【ポジティブな理由の例】

  • 一回り大きくなってもらうために、新たなスキルや経験を身に付けてほしい。
  • 将来、管理職になったときのために支社や支店、工場などの現場を理解してもらいたい。
  • ○○部長の下で、マネジメント力や交渉能力など現在不足している部分を学び、強化してもらいたい。
  • 異動先の部署が停滞しているため、新しい視点や考え方を投入して活性化してほしい。

 こうした会社の期待や狙いを知ることで、自分が新しい部署で何をすべきか、何を目指すべきかがクリアになり心機一転する人も少なくありません。

 また逆に次のようなポジティブではない理由で異動を命じているときもあります。

【ポジティブでない理由の例】

  • 現在の部署では業績がいまひとつだから、違う部署の方が適性に合って活躍できるかもしれない。
  • 長期間同じ部署にいるため、仕事ぶりがマンネリ状態になってしまっているようだから、新たな部署で刺激を受けて頑張ってもらいたい。
  • 本人は気づいていないが、言い方や態度にパワハラ的、イジメ的な傾向がある。または自分勝手な行動(上司の指示に従わないとか、業務中に私用を頻繁に行うなど)があり、部署の人間関係を乱している。
  • 欠勤や遅刻が多いので、部署のメンバーに迷惑がかかり負担になっている。

 ちなみにこうしたポジティブではない理由は、会社側がその事実を本人にしっかりと伝えていない場合も時々あるようです。本人の気持ちを傷つけてはいけない、異動先でのやる気をそいではいけないという配慮もあるようですが、マイナスの要因があった場合はしっかり認識して改善していかないと、また同じことの繰り返しになりかねません。

 「何か改善すべきことがあれば改めたいので、ぜひ教えてください」などと、本人から真摯かつ謙虚な態度で尋ねると、きっと人事や上司も親身に答えてくれるはずです。

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