日経グッデイ

4つのストレッチで慢性腰痛を治す!

臨床試験で実証、これが慢性腰痛に効く4つの簡単ストレッチ

ポイントは「寝たまま」「反動をつけない」「痛くなる手前で止める」

 伊藤和弘=フリーランスライター

 長引く腰痛がつらい、少しでも楽にしたい…。そんな“腰痛持ち”の人に向けて、東京大学医学部附属病院リハビリテーション部の理学療法士・山口正貴さんらが考案し、臨床研究で効果が実証された「4つのストレッチ」。第2回となる今回は、いよいよその方法をご紹介しよう。NHKの情報番組「ガッテン!」でも紹介され、反響が大きかったというこのストレッチ。ぜひ試してみてほしい。

本特集の内容

 前回(「腰痛は“人まかせ”“道具まかせ”では治らない!」)説明したように、慢性非特異的腰痛(3カ月以上続く、明確な原因の分からない腰痛。以下、慢性腰痛)を引き起こす要因は3つある。(1)動きすぎ(2)動かなすぎ(3)硬すぎだ(下図)。

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 重い荷物の上げ下ろしを繰り返すなど、腰に負担をかけすぎるのはいけないし、逆に一日中座りっぱなしで腰を動かさないことも腰痛の原因になる。また、「脊椎の可動域が広い人、つまり背骨が柔らかい人は腰痛になりにくいんです」と東京大学医学部附属病院(東京都文京区)リハビリテーション部の理学療法士・山口正貴さんは話す。体が硬いと、曲げたりひねったり、様々な動きをする際に腰にかかる負担が大きくなり、睡眠中も寝返りが少なくなって腰痛を起こしやすいという。

 「動きすぎ」や「動かなすぎ」は日常生活で注意すれば予防は可能だ(日常動作や姿勢における腰痛予防については第3回で詳しく解説する)。3番目の「硬すぎ」を解消するため、山口さんは今から6~7年前、慢性腰痛を改善する「4つのストレッチ」を考案。実際に慢性腰痛に悩む人たちに試してもらい、効果が高いことを確認した(詳しくは本記事の最終ページを参照)。

腰痛に関係する筋肉は腰回りだけではない

 なぜ4種類かというと、腰だけではなく、胸や太ももの筋肉を伸ばすストレッチも含まれているため。「腰の柔らかさに関わるのは腰の筋肉だけではありません。大胸筋、広背筋(背中の筋肉)、ハムストリングス(太ももの後ろの筋肉)なども深く関係しているんです」と山口さんは説明する。4つのストレッチは、これら腰痛に関わるすべての筋肉をバランス良く伸ばすと同時に、腰椎(背骨の腰の部分)を「曲げる」「反る」「ねじる」動作ができるように考えられている。

 ストレッチによってケガをしたり、腰痛を悪化させたりすることのないよう、安全性にも十分に留意している。ポイントは、「寝た姿勢で行う」「反動をつけない」「痛くなる手前で止める」の3つ。寝た姿勢で行うと背骨に余分な荷重がかからないので、ケガをする危険が少ない。反動をつけないのも同じく、筋肉や骨に無理な力がかからないようにするためだ。

 どのストレッチも、目標とする「最終形」(完成した形)があるが、最初はできる範囲で構わない。毎日続けるうちに、少しずつ最終形に近づいていくはずだ。気をつけるべきは腰の痛みが、ストレッチをしているときに足にまで広がっていくこと。「これは末梢化現象といって、そのまま続けるとかえって腰痛が悪化します。少しだけ痛みを感じるくらいなら問題ないのですが、痛みが足先に向かって広がるように感じたら、必ずその手前で止めてください」と山口さんは注意する。

「腰痛改善4つのストレッチ」が安全な理由

  1. すべて寝た姿勢で行う(腰に余分な荷重がかからない)
  2. 反動をつけない(動的ストレッチではなく、静的ストレッチ)
  3. 段階的に進め、「少し痛い」ところで止める

 どのストレッチも、脱力して行うことがポイントだ。腰痛があると、腰を動かすことに恐怖を感じ、つい体に力が入ってしまいがち。それを避けるために、最終形、または自分ができる限界まで曲げたら、力を抜いて6回深呼吸する(30秒前後)。1つのストレッチにつき3セットを1日3回ずつ行うのが理想だが、「1日1回でも構いません」と山口さん。

 「時間帯は入浴後から就寝前がベスト。横たわった姿勢で行うので、寝る前の習慣にするのもいいでしょう。1カ月続ければ腰痛の改善効果が感じられるはずです」(山口さん)

 ではいよいよ、「4つのストレッチ」の方法を説明しよう。

1. タオルで足上げストレッチ

股関節と骨盤の中にある仙腸関節を曲げて、ハムストリングスからふくらはぎにかけて足の後ろにある筋肉(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋、腓腹筋など)を伸ばすストレッチ。

  1. 仰向けに寝た状態から両膝を立てる。両手でタオルを持ち、両膝の下に引っかける。
  2. 左足を持ち上げ、タオルで左足の指の付け根から爪先を包むように引っかける。
  3. 膝を伸ばしながら、腕の力でゆっくり左足を持ち上げる。無理をしない範囲で、上がるところまで持ち上げてストップ。
  4. そのまま全身の力を抜き、ゆっくり6回深呼吸。足の後ろ側の筋肉が伸びていることを意識する。
  5. 最初の両膝を立てた姿勢に戻り、今度は右足にタオルをかけて同じストレッチを行う。これを左右交互に3セットずつ行う。

左足が床と垂直になるまで上がり、足の裏が天井を向いたら、右足の膝を伸ばして真っ直ぐにする。これが最終形!

2. 膝抱えストレッチ

腰椎を前に曲げて、お尻と腰の筋肉(大殿筋と脊柱起立筋)を伸ばすストレッチ。

  1. 仰向けに寝た状態から両膝を曲げる。
  2. 右手で右膝を抱える。
  3. 左膝も曲げる。両手の指を組んで両膝を抱える。そのまま無理のない範囲で両膝を胸に引き寄せる。頭が床から浮かないように注意する。
  4. 両手以外の全身の力を抜き、ゆっくり6回深呼吸。腰の後ろの筋肉が伸びていることを意識する。終わったら片足ずつ伸ばし、両膝を立てた仰向けの姿勢に戻る。これを3セット繰り返す。

太ももが胸につくくらい曲がるようになったら最終形!

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3. 肘立て+膝曲げストレッチ

腰椎を後ろに反らし、お腹から太ももにかけて体の前面の筋肉(腹直筋、腸腰筋、大腿直筋)を伸ばすストレッチ。

  1. うつ伏せの姿勢から、肘を立てて上体を起こす。肘の角度は直角にする。このとき顔を上げすぎると腰が反ってしまうので、床と平行に保ち、視線をまっすぐ床に落とす。
  2. ゆっくり両膝を曲げて、膝が直角に曲がるまで両足を上げていく。両足の爪先が離れないように注意する。
  3. 全身の力を抜き、ゆっくり6回深呼吸。お腹から太ももにかけて体の前面の筋肉が伸びていることを意識する。終わったら、うつ伏せの姿勢に戻る。これを3セット繰り返す。

肘を立てたり足を上げた段階で、痛みや硬さを感じなくなれば最終形!

4. 腰ねじりストレッチ

腰椎をねじり、上半身から膝にかけて体の側面の筋肉(脊柱起立筋、大胸筋、肋間筋、広背筋、腹斜筋、大殿筋、大腿筋膜張筋)を伸ばすストレッチ。

  1. 仰向けに寝た状態から両膝をそろえて立てる。
  2. 下半身をひねり、両膝をゆっくり左側に倒していく。このとき上半身は天井を向いたまま。両肩が浮かないように注意する。
  3. 右膝が浮かないように左手で押さえ、右腕を頭の上にまっすぐ伸ばす。
  4. 全身の力を抜き、ゆっくり6回深呼吸。腋の下から太ももまで、体の側面の筋肉が伸びていることを意識する。終わったら仰向けの姿勢に戻り、反対側も行う。左右交互に各3セット。

余裕があれば左足をまっすぐ伸ばし、右膝をさらに左に倒す。両肩と右膝が床に付いたら最終形!

 いかがだろうか。慢性腰痛のある人が実際に試してみると、簡単にできる(最終形まで行ける)ものとできないものがあることに気付くだろう。

 「どのストレッチも最初の1カ月は続けてほしいですが、1カ月を過ぎたら、最終形までできたストレッチは毎日しなくても構いません。腰痛の原因はできないストレッチの中にあるので、それを重点的に行ってください」と山口さん。最初はできないストレッチも、毎日やっていけば少しずつできるようになっていく。それとともに、腰痛も徐々に軽くなっていくはずだ。

 4つのストレッチをすべて完璧にできるようになったら、毎日行う必要はない。「変わらずにできているかどうかをチェックする感覚で、ときどきやってみてください。最終形を維持できていれば、腰痛の再発を予防できます」と山口さんは話す。

4つのストレッチを実際に慢性腰痛患者が試してみた結果は…

 山口さんが所属する東京大学医学部附属病院リハビリテーション部を中心とした研究チームは、この4つのストレッチの効果を確認するため、半年以上続く慢性腰痛患者を対象に比較試験を行った。患者を「週1回の姿勢指導を行うとともに4つのストレッチを1日5~6回、計4週間実行してもらう群(ストレッチ群)」と「特に何も行わない群(対照群)」に分け、4週間後の腰痛の改善について比較した。解析対象となったのは、ストレッチ群35人、対照群31人だ。

 その結果、ストレッチ群の4週間後の腰のVASスコア(痛みを0~100点の間で主観的に評価する方法)は、著しく改善(下図)。実に8割以上の人たちに効果がみられた。腰痛だけでなく、下肢の痛み、しびれ、日常生活での障害、心理的な障害などの項目でも、対照群と比較して明らかな改善が見られたという。

1カ月のストレッチで明らかに腰痛の自覚症状が改善
(データ出典:高見沢圭一ら. 国立大学リハビリテーション療法士学術大会誌. 3:143-150, 2015)
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 腰の痛みが和らげば、気分も上向きになり、活動的な生活を取り戻すことができる。慢性腰痛に悩んでいる方は、ぜひ「4つのストレッチ」を今夜から試してみてほしい。

 次回(「座る、かがむ、持ち上げる…その動作が腰痛を招く!」)は、腰痛持ちの人が“やってはいけない”日常生活の動作や姿勢について解説する。

(イラスト:堀江篤史)

山口正貴さん
東京大学医学部附属病院リハビリテーション部 理学療法士
山口正貴さんさん 東京理科大学理学部在学中にぎっくり腰を患い、リハビリに興味を持つ。大学卒業後、帝京平成大学専門学校理学療法学科を経て、2005年より東京大学医学部附属病院に入職、現在に至る。2007年より千葉県介護予防トレーニングセンターで予防事業を兼任。腰痛に対する運動療法の研究を行う傍ら、学会や論文発表、書籍の執筆・監修、メディアへの出演、講師等にも従事。