腰痛は“人まかせ”“道具まかせ”では治らない!
慢性腰痛の元凶は「動きすぎ」「動かなすぎ」そして「体の硬さ」
伊藤和弘=フリーランスライター
腰痛に悩む日本人は約2800万人とも推計されているが、その大部分は、医師の診察や検査では明確な異常が見つからない「非特異的腰痛」だ。長引く腰痛がつらい、少しでも楽にしたい…。そんな“腰痛持ち”の人に向けて、東京大学医学部附属病院リハビリテーション部の理学療法士・山口正貴さんらが考案し、臨床研究で効果が実証された「4つのストレッチ」を紹介しよう。なぜ、こんなに簡単なストレッチが腰痛に効くのか? そもそも慢性腰痛の原因とは? “腰痛持ち”の人が「やってはいけない日常動作」とは?――本特集で詳しく解説する。
腰痛は “人まかせ”“道具まかせ”では治らない!
慢性腰痛の元凶は「動きすぎ」「動かなすぎ」そして「体の硬さ」
第2回
臨床試験で実証、これが慢性腰痛に効く4つの簡単ストレッチ
ポイントは「寝たまま」「反動をつけない」「痛くなる手前で止める」
第3回
座る、かがむ、持ち上げる…その動作が腰痛を招く!
腰痛フリーを目指す、日常動作のポイント
まずは下の図1をご覧いただきたい。厚生労働省が行っている国民生活基礎調査で、病気やケガなどの自覚症状があると答えた人のうち、男性で最も多いのは「腰痛」。女性でも「肩こり」に続いて2番目に多かった。
腰痛は多くの人が悩んでいる普遍的な症状だ。世界的に見ても、約40%の人が一生に一度は腰痛を経験するという(*1)。「先進国では特に多く、8割の人が腰痛を経験するという報告(*2)や、日本では約2800万人もの人が腰痛に悩んでいるという推計(*3)もあります」と話すのは、東京大学医学部附属病院(東京都文京区)リハビリテーション部の理学療法士・山口正貴さんだ。
腰痛は大きく「急性」と「慢性」に分けられる。重い荷物を持ち上げようとして起こすぎっくり腰(急性腰痛症)などが急性腰痛、3カ月以上痛みが続いているものが慢性腰痛と定義されている。
ぎっくり腰のように原因が分かりやすい急性腰痛に対して、多くの慢性腰痛は原因がはっきりしない。「なんだか知らないけど、いつの間にか…」と、なんとなく始まってしまうパターンが多いのだ。
原因がはっきりしている急性腰痛は、痛みが強い割に怖くない。急性腰痛の86%は2週間以内に自然治癒するという報告もあり(*4)、ぎっくり腰も、基本的に放っておけば治るという。「ぎっくり腰の場合、安静にするのは2日まで。動かないと痛みへの恐怖心が増幅し、筋肉が硬くなり、筋力低下を招くため、多少痛くても3日目からは日常生活に戻った方が早く治ります」と山口さんは説明する。
問題は、いつまでもじわじわと痛みが続く慢性腰痛の方だ。
*2 Yao and Artusio‘s Anesthesiology: Problem-Oriented Patient Management 2011.
*3 吉村典子ほか. 膝痛・腰痛・骨折に関する高齢者介護予防のための地域代表性を有する大規模住民コホート追跡研究. 平成24(2012)年度厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究.
*4 Deyo RA, et al. Spine (Phila Pa 1976). 1987 Apr;12(3):264-8.