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あの人のカラダマネジメント術

五輪金・野口みずきさん 燃え尽き症候群と無縁の理由

元五輪女子マラソンメダリストに聞く(2)

 高島三幸=ライター

五輪での金メダルは、競技人生における最高地点での目標ではなかったという

 有森裕子さんや高橋尚子さんが、「五輪メダリストがプロになる」という前例を作ってくださいました。でも私の場合、監督から「もしお前がプロになるんやったら、俺らは練習を見いひんぞ」と言われていたのです。その言葉の裏には、純粋に走ることだけに集中して、マラソンを極めてほしいという思いがあったと思います。実際にテレビ番組の出演やCMのオファーもたくさんあったのですが、私自身も性に合わないと思っていたんですね。有森さんや高橋さんのようにきれいでオーラがあるわけでもないし、チョコレートのCMでニコっと笑って宣伝している自分が想像できなかった。だからプロの道は選ばず、オファーはお断りし、五輪前と環境を変えることなく、練習に集中できていたことが要因かと思います。

 それに五輪での金メダル獲得は私にとって最大の目標ですが、競技人生における最高地点での目標ではありませんでした。プラチナメダルがあるわけではないけど、やっぱり次の目標は日本記録の更新だと。それはここでも、高橋尚子さんが金メダリストになった後に日本記録を樹立した(注:当時の世界記録)という前例があったからこそ、次の目標にフォーカスできたのだと思います。現役時代、高橋さんに憧れていたなんて口に出して言えなかったですが、やっぱり背中を見ていたんです。追いかけていたというよりも、高橋さんを超えたかった。

だから次の北京五輪でも、金メダルを取る覚悟で挑まれるわけですね。ただ、アテネ五輪以降、ケガが多くなっていきました。

 そうですね。これまでに疲労骨折など骨系の故障を経験しました。痛かったですが、私の場合は自分の体とうまく対話することで、すぐに治ったんです。つまり、整形外科のお医者さんから「疲労骨折です。1カ月は走ったらダメですよ」と言われても、少し休んでリハビリしながら自分の感覚で大丈夫そうだと思えたら、走るトレーニングを再開していました。骨系の故障は短期間で治っていたので、年間でみると結構走ることができていたんです。

 でも、代表に選ばれた北京五輪の前に、太ももの裏を肉離れしてしまいました。アテネ五輪ではチャレンジャーとして挑みましたが、北京五輪で代表に選ばれてからはディフェンディングチャンピオンとして臨まなければいけないので、自分で自分にプレッシャーをかけていました。アテネ五輪よりもさらに強い脚力を求めて鍛えようとして、無理をしすぎたのだと思います。

 肉離れをしてからジョギングしかできませんでしたが、五輪出場を諦めきれずにトレーニングしようとしていました。それも悪化させる原因だったと思います。

北京五輪欠場によるバッシング

五輪の本番5日前に出場辞退を決められた時、どのようなお気持ちだったのでしょう。

ケガによって苦しい時間を経験した

 もちろん悔しかったし、普通の精神状態ではなかったと思います。だから決断がギリギリになってしまった。監督たちもそんな私の気持ちを尊重してくれたので、結果的に迷惑をかけてしまいました。

 欠場を発表した後、マスコミの方々から藤田監督や広瀬コーチに多くの電話がかかってきたようです。私自身は、監督やコーチから「すぐに北海道に行くように」との指示を受けて、北海道にいたので直接的なバッシングを受けることは多くはなかったのですが、その後も非難のメールや手紙が殺到し、「非国民」という声まで上がったみたいで……。後から事実を少しずつ知るわけですが、そうした多くの非難からも監督とコーチが盾になって私を守ってくれました。

 一心同体で2大会連続の五輪で金メダルを取るために時間と労力を費やしてきたのに、監督やコーチ、スタッフには本当に申し訳ないと思いました。その後、講演会などに招いていただいても、「故障で出場できなくなって申し訳ございませんでした」とその場にいる皆さんに頭を下げながら、涙がこぼれたときもありました。

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