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あの人のカラダマネジメント術

星出彰彦さん 宇宙滞在時のストレス解消法は?

現役宇宙飛行士に聞く(2)

 高島三幸=ライター

 もちろん、人間ですので日によって気分のいい日、悪い日などはあります。でも、ISSに一緒に滞在した宇宙飛行士の仲間とは2年間ずっと一緒に訓練しているので、何となくお互いの性格が分かる。今日は気分が悪そうだからそっとしておこう、逆に声をかけてみようなどの気づかいが互いにできるのです。

宇宙滞在中も土日は休み

宇宙に滞在している間はオンとオフなどの区別はあったのですか?

 土日は休みで週休2日です。ただ、休みとはいえ、土曜日の午前中は掃除の時間。誰かが掃除をしてくれるわけではないので自分たちで掃除機をかけたりしていました。また、休みだからといってどこかに買い物に行けるわけでもないので、それぞれ思い思いのことをしたり、運動はやらなければならないのでその時間を取ったり、地上の人とメールのやり取りなどをして過ごしていました。宇宙ステーションの下側に大きな窓があるんですが、私の場合はそこに入りびたって地球を眺めていることも多かったです。

国際宇宙ステーションの模型と星出さん(写真 厚地健太郎)

宇宙に飛び立たれて、体の不調を感じたことは?

 初めて宇宙に飛び立ったその日の夜に、宇宙酔いになりました。4回吐いて、酔い止めの薬をもらって眠り、翌朝もう1回吐きました。でもそのあとはケロッとしていましたね。不思議だったのは、船酔いや車酔いと異なり、気持ち悪さがずっと続くことはありませんでした。作業をしていたら急に、うっとなって吐きますが、あとは不快感もなく大丈夫だったんです。

 宇宙酔いは、なる人とならない人がいるし、すぐ終わる人と長く続く人もいる。こればかりは個人差があるので、どの宇宙飛行士も宇宙に行ってみないと分かりません。人は自分の置かれた場所を目で確認し、耳の奥にある内耳という器官でもキャッチしますが、視覚と耳による平衡感覚がずれた時に宇宙酔いになりやすいといわれています。でも、メカニズムの詳細までは分かっておらず、いまだにそれは研究テーマの一つです。

 僕の場合、2回目の打ち上げでは体が無重力状態を覚えていたのか、宇宙酔いはありませんでした。振り返ってみると1回目のフライトでは、エンジンの停止と同時にすぐ動き回って作業をしなければいけなかったのですが、2回目はエンジンが停止してから、体が固定された状態のまましばらく作業をしたので、それも宇宙酔いにならなかった要因かなと分析しています。

 ちなみに、2回目の宇宙飛行の時は笑ってばっかりだったんですよ。トイレが故障した時も笑いながらほかの飛行士と修理していて……。一緒に行ったクルーがユーモアあふれる人たちで、すごく楽しく仕事ができました。それが地上の仲間にも「伝染」して、チーム全体がとても明るかったと言われました。どんな環境でもユーモアは大事だと思いました。

星出さんら第32次長期滞在クルー。2回目の宇宙滞在時、「きぼう」船内実験室にて/撮影日:2012年8月14日(日本時間)(C)JAXA/NASA
[画像のクリックで拡大表示]

宇宙酔い以外の不調は?

 体調を崩したことはないですが、無重力空間で移動する時はスーパーマンが飛ぶ時のように首を上に上げます。筋肉を使って首を引っ張るので、それに慣れるまでしばらく首が痛くなりました。宇宙だと重力がないので、頭をどの方向に動かすにも筋肉を使う。それは不思議で新しい感覚でした。

地球に戻った時にはどんな体の変化がありましたか?

 地上に体が適応しようとする段階で、気持ち悪くなるような状態が続く人はいます。かく言う僕も重力で酔ってしまいました。体が重く感じ、宇宙酔いと同じように視覚と耳による感覚がずれて混乱してしまった。その時に医師に言われた防止策が、急に頭を動かすと気持ち悪くなるから、歩く時は首を動かさず、肩と一緒に体ごと動かしなさいということでした。でも油断してしまって、歯を磨きながら首を動かした途端、気持ち悪くなりました(笑)。

次回に続く)

◆現役宇宙飛行士に聞く

第1回 星出彰彦さんに聞く 宇宙飛行士に求められる資質・体力
第2回 星出彰彦さん 宇宙滞在時のストレス解消法は?
第3回 星出彰彦さんに聞く 無重力空間での筋トレのやり方
星出彰彦(ほしで あきひこ)さん
宇宙飛行士
星出彰彦(ほしで あきひこ)さん 1968年東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部機械工学科卒業、ヒューストン大学航空宇宙工学修士課程修了。92年宇宙開発事業団(現JAXA)に入社。H2ロケットなどの開発・監督、宇宙飛行士の技術支援などを経て、99年日本人宇宙飛行士に選抜。08年スペースシャトル「ディスカバリー号」に搭乗し、「きぼう」船内実験室の国際宇宙ステーション(ISS)取り付け作業に参加。12年ISS第32次/第33次長期滞在クルーとしてISSに約4カ月滞在。2020年には約半年間、再びISSに滞在し、期間中には船長も務める予定。

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