日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様

日経 Gooday

ホーム  > からだケア  > あの人のカラダマネジメント術  > 朝原宣治さん46歳 今だから話せる世界マスターズVの裏話  > 2ページ
印刷

あの人のカラダマネジメント術

朝原宣治さん46歳 今だから話せる世界マスターズVの裏話

元陸上五輪メダリストに聞く(1)

 高島三幸=ライター

 まず、MRI(磁気共鳴画像装置)で筋肉の状態を調べてもらったのですが、臀部(でんぶ)やハムストリング(太ももの裏側の筋肉)、内転筋の筋肉が現役時代に比べて縮小し、予想以上にスカスカでした。これは走るトレーニングの前に、まずはケガをしない体づくりを優先しなければと、家で寝転がって足を上げて下腹部を鍛えるようなきつめの体幹トレーニングを重点的に行いました。さらに、スピードを上げるために重要な臀部やハムストリングの筋肉を、ウエートトレーニングで集中的に鍛え直しました。走る練習は週1回程度、大阪ガスのトラックで時々選手たちと一緒に走るようにしましたが、筋肉が減っているため、なかなかイメージ通りの走りができませんでした。

具体的にどんな練習をされたのですか?

 長めのウオーミングアップや「走の基本」(*1)などで体を温め、120m程度の「快調走」(*2)を何本か行い、最後にスパイクを履いてスピードを上げて短い距離を走ったりしました。でも、当然ですが週1回のトレーニングだと、体力がなかなかつきません。そのあたりが悩ましかったですね。

*1 走るための正しいフォームや動きを体に覚えさせるための運動
*2 7~8割の心地よいスピードで走ること

ジャカルタの道路や空き地でトレーニング

そんな中、8月5日の北海道マスターズ陸上競技選手権大会M45の部の男子100m走では、11秒30というタイムを出されました。

 世界記録を狙うなら、11秒10ぐらいが目標かなと思っていましたが、向かい風でしたし、週1回しか練習していないという準備不足を考えれば、そこそこのタイムで走れたと思います。

 試合後、自分の走りを動画でチェックしながら、さらにフォームを安定させるために筋力を鍛えることが課題だと考え、ウエートトレーニングと走る量を増やすことにしました。そして、8月15日にメンバーが大阪ガスのトラックに集まって行うバトン練習に備えたのです。でもその当日、ふくらはぎに違和感を覚えて練習を中断することに…。

 それまでは、足に急激な負担がかからないように、自分のペースで慎重に練習を積んでいました。ですが、バトンパスの練習でメンバーが加速しながら向かってくると、本能的にトップスピードに上げなければと力んでダッシュしてしまい、ふくらはぎに違和感が生じてしまったんです。結局、1回もバトン練習ができず、私は後悔や不安、焦りなどを抱えたまま、アジア大会の陸上競技の解説の仕事でインドネシアのジャカルタに飛び立ちました。

「道路や空き地で練習するなんて、俺は武井壮かって(笑)」

 当然ですが、ジャカルタで仕事をしている間も、世界マスターズの日程が刻々と近づいてきます。そこで足の状態を見ながら、空き時間に練習していました。アジア大会に出場する選手がウオーミングアップしているトラックで練習しようかと思いましたが、それはさすがに恥ずかしいので、炎天下、アスファルトの道路や空き地を走っていましたね。「道路や空き地を走るなんて、世界記録を出すためにどんな練習しているんだ。俺は武井壮か」と思いながら(笑)。武井くんが、トレーニングしている様子を毎日SNS(交流サイト)にアップするので、それを見るたびに結構プレッシャーになっていました(笑)。

海外で仕事をしながらトレーニングするのは、疲れもたまりそうですが…。

 海外のホテルでしたが部屋に浴槽があったので、毎日湯船に入って疲れを取ることができました。部屋ではストレッチや補強運動などを続けて、疲れを残さないようにしていました。

 日本でトレーニングするときも、家からおにぎりなどを持っていき、トレーニング後にすぐ栄養補給をして体の回復に努めていました。改めて考えると、体に気を使った休養の取り方や食事の取り方を意識したのは、それこそ10年ぶりで新鮮でしたね。

 46歳という年齢で、しかも満足する練習ができていないという、現役時代とは全く異なる中でのチャレンジでしたが、知識や経験を駆使して限られた時間でどう調整し、中年になった自分がどれだけのパフォーマンスを発揮できるかということを試せたのは、純粋に楽しかったです。準備期間が短かったのと、ケガだけが心配でしたが、バトンさえもらえれば世界記録を出せる自信もあったので、ワクワクしました。

 結果的に、世界記録には届きませんでしたが、せっかくここまで走ることができたし、参加されている世界中の中年・高齢アスリートのパフォーマンスに刺激を受け、チームで世界記録へのリベンジを果たし、個人でも挑戦したい思いが生まれました。

次回に続く)

(インタビュー写真 水野浩志)

【元陸上五輪メダリストに聞く】

第1回 朝原宣治さん46歳 今だから話せる世界マスターズVの裏話
第2回 朝原宣治さん モチベーションと集中力を維持する秘訣
第3回 朝原宣治さん 年齢に負けず、疲れにくい体をつくる方法とは?

朝原宣治(あさはら のぶはる)さん
朝原宣治(あさはら のぶはる)さん 1972年兵庫県生まれ。高校時代から陸上競技に本格的に取り組み、走り幅跳び選手としてインターハイ優勝。大学では国体100mで10秒19の日本記録樹立。同志社大学卒業後、大阪ガスに入社、ドイツへ陸上留学。2008年北京オリンピックの男子4×100mリレーで銅メダル獲得。引退後、2010年に陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。2018年9月、スペイン・マラガで開催された世界マスターズ陸上競技選手権大会・M45部門・男子4×100mリレーで金メダルを獲得。

先頭へ

前へ

2/2 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • 熱中症・かくれ脱水を防ぐ「水分補給」「マスク着用」のコツ

    脱水症やその一歩手前の「かくれ脱水」とはどういうもので、なぜ様々な病気につながるのか、脱水症はどんな人がなりやすく、どう予防すればいいのか。夏の今こそ知っておきたい、脱水症の怖さと対策について紹介する。さらに、夏期におけるマスク着用の注意点についても解説する。

  • かかると怖い!「膵炎」「膵がん」

    激痛に襲われる「急性膵炎」や、発見しにくく5年生存率が極めて低い「膵がん」など、膵臓の病気には厄介なものが多い。今回は、膵臓という臓器の役割や、膵臓の代表的な病気である「膵炎」「膵がん」の怖さ、早期発見のコツをまとめていく。

  • 60代以降で急増! 男を悩ませる前立腺の病気

    中高年にさしかかった男性にとって、病気が心配になる臓器の1つが「前立腺」だ。前立腺の病気のツートップ、前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも中高年になると急増する。前立腺肥大症は夜間頻尿などの尿トラブルの原因になり、前立腺がんは、進行が遅くおとなしいがんと思われているが、骨に転移しやすいという特徴があり、怖い一面もある。今回のテーマ別特集では、前立腺の病気の症状から、具体的な治療法までを紹介していこう。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2020 Nikkei Inc. All rights reserved.