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あの人のカラダマネジメント術

室伏広治さん 「使える筋力」を育てる新聞紙エクササイズ

元ハンマー投げ選手の室伏広治さんに聞く(3)

 高島三幸=ライター

 まず、新聞紙の見開き1枚を、テーブルの上に広げます。女性であれば、新聞を破いて2分の1サイズにしてもいいでしょう。その上に片手を置き、新聞紙を片手だけで小さく丸めていきます。最初はゆっくりでも構いません。クシャクシャに丸めていって、最後には手の中に収まるまで小さくします。空中で新聞紙をたぐりよせるようなイメージです。

新聞紙の見開き1枚をテーブルの上に広げ、その上に片手を置いて、新聞紙を片手だけで小さく丸めていく
[画像のクリックで拡大表示]

 このときのポイントは、「どうしたら効率よく握りつぶせるのか」と考えながら手の中に収めていくことです。握る角度を変えたり、丸めやすいように持ち替えたり想像したりしながら、工夫して着実に小さく丸めていきます。目で見て、手全体で新聞紙の形を感じ取りながら、小さく丸めていく。そうすると、握力だけでなく手全体をコントロールせざるを得ないことから、様々な神経回路を使うことにもなります。

 実際にやってみると意外に難しく、これまで手を自由に動かせると思っていても、自分自身の手がどれだけ不自由であったのかが分かるはずです。小さく丸めていく過程で、手が自由に動かないことにもどかしさを感じる方もいるかと思います。

 腕まわりの筋肉を鍛えるつもりがなくても、新聞を丸めるという目的を達成した結果、腕がパンパンに張った状態になります。感覚が先に働いた結果、筋肉が鍛えられるのです。また、筋肉の存在さえ忘れてしまうぐらい集中するので、通常の筋トレより高度な運動だといえます。

 武道などでも集中状態に入ると自分自身の体が消えたように感じるのだと聞いたことがありますが、メンタルと体が一体になるというこの感覚がとても大切だと私は思います。

 単にハンドグリップを握るトレーニングを100回行っても、運動が惰性的になり、脳活動や身体感覚が運動中に多く関与するとは限りません。新聞を丸める運動は、運動と身体感覚が融合した状態になるので、“使える筋肉”を育て、人間の動きに直結する力になりやすいとも思うのです。

 もちろん通常の筋トレなどを否定しませんし、筋肉を鍛えることは大事です。ですが、運動と身体感覚を分けるのでなく、自然と筋肉が鍛えられるようなトレーニングのほうが、運動能力を高めるために大切だと考えています。

 例えば、歩くためのリハビリをするにしても、スクワットやレッグカールといった足の筋トレだけを行っても早い回復は見込めません。歩行中の8割以上は片足でバランスを取らなければならないことから、足の裏の感覚を改善させたり、全体重を片足で支えられるよう片足で着地した際の安定性を向上させたりしなければいけない。スムーズに歩行するには、まず身体感覚を向上させ、自分の体全体を片足で無意識な状態で支えることが必要であり、実際に歩くような動作のトレーニングが求められるでしょう。

 話を戻しますと、この新聞紙を丸めるエクササイズは、私もたまにやりますが、一度たりとも新聞紙が同じ形にならず、何度やっても飽きがきません。このエクササイズに取り組んでいるときは、本当に集中します。

「最後のこの通り!新聞紙が片手にすっぽり収まります」

 嫌なことがあれば、気持ちを切り替えるきっかけとして、新聞紙エクササイズを取り入れて、集中する時間を作るのもいいかもしれません。もちろん、新聞を読み終えたら1日1回丸めてみる習慣を持つこともお勧めします。

握力が弱くても大車輪ができるワケ

 2つ目ですが、もしパートナーがいれば「手を引っ張り合うエクササイズ」を試してください。まず、パートナーと手をつないで互いに引っ張り合います。そのとき、何も考えないでやると、手だけの力で引っ張っていることを実感すると思います。相手が自分より力が強い人だと、踏ん張りきれずに引っ張られてしまうでしょう。

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