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あの人のカラダマネジメント術

室伏広治さん「体が欲しているものを見つけるのもトレーニング」

元ハンマー投げ選手の室伏広治さんに聞く(1)

 高島三幸=ライター

 私は静岡県沼津市出身で、幼い頃から魚が食卓に出てくる環境でした。ですから現役中は、冷凍庫にたくさん保存していたアジの開きなどを焼いて食べていましたね。米国で活動している時も、スーパーで買ってきて自分で焼いていました。こんなに手軽に調理できて体にいいファストフードはないと思います。

「トマトをランダムに切って、上からレモンを搾るんです」

 野菜や果物も好きで、これも欠かさずとっていました。中でも毎日食べても飽きないぐらい好物なのがトマトで、ナイフでランダムにそぎ落として、レモン1個分の搾り汁と塩をかけて食べていました。そして、残ったレモン汁はそのまま飲み干します。

 トマトは水分やミネラルがとれますし、粘膜などの正常な働きを助け風邪などにかかりにくくするビタミンAの材料であるβ-カロテンも摂取でき、リコピンによる抗酸化作用もある。レモンはビタミンCが豊富です。でも、やっぱり自分が好きなものだから、食べ続けられたのだと思います。

 競技生活の終盤は、米国の栄養学専門の先生に内臓にいいレシピなどを教えてもらって、野菜や果物を「バイタミックス(Vitamix)」のミキサーでコールドプレスジュース(*3)にして飲んでいました。こうしたジュースにすれば栄養素を吸収しやすくなります。

 ただ、ミキサーだけに頼り切るのではなく、やはり野菜や果物そのものを歯でちゃんとかんで、食物繊維をとり、唾液を出したり胃で消化したりするという本来の食べ方も大事だと思います。食べることで消化器も日々トレーニングすることが必要でしょう。

 アスリートにとって食べることは仕事です。でも、「この栄養素をとらなければいけない」と義務のように食べ続けるのは、ストレスになるだけで継続しにくい。本来食事は、ただ家畜のように腹を満たすだけではなく、楽しい時間であるものです。必要な栄養素を含む食べ物の中から、好きなものを見つけることが、習慣化するコツにもなるでしょう。本当に自分の体が欲しているもの、必要なものは何かを見つけることも、トレーニングの一つだと思いますね。

会議前のランチでは炭水化物を控えめに

 集中力を高めるには、食べ方も意識しなければいけません。例えば、ビジネスパーソンであれば、午後イチの会議で集中できるようにランチには何をとればいいかと考えることは大事でしょう。

 ラーメンとライスなど炭水化物を多く摂取するランチセットを選んだり、お菓子やジュースで空腹を満たしたりすれば、当然一気に血糖値が上がり、眠気が襲って集中できなくなります。であれば、どんな食事をどれくらい食べれば集中しやすくなるのかと調べて実験するなど、自分にとってベストな食事を見つけていくことが大事になります。

 夏バテで食欲がないときも、やる気や集中力は低下しますから、小分けにして食べる回数を増やしたり、疲労回復が期待できるビタミンB1を摂取するような食事を選んだりすることは大事になります。夏野菜、果物から水分とミネラルを補給したり、冷たい飲み物を控えて消化吸収機能を低下させないようにしたりすることも意識するといいでしょう。こうした心がけも、仕事に集中するためには欠かせない要素だと思います。

(第2回に続く)
*3 「低温低圧圧縮方式」という製法で搾り出したジュースで、食材の持つビタミンや酵素を損なわずに摂取できる
(写真 鈴木愛子)
室伏広治(むろふし こうじ)さん
室伏広治(むろふし こうじ)さん 元男子ハンマー投げ選手。1974年生まれ。現役中の2008年に中京大学大学院修了後、博士号(体育学)取得。中京大学准教授を経て、2014年東京医科歯科大学教授。2001年世界陸上エドモントン大会で銀メダル、2004年アテネ五輪で金メダル、2011年世界陸上テグ大会で金メダル、ロンドン五輪では銅メダルを獲得。4大会連続で五輪に出場。日本陸上競技選手権大会20連覇。自己最高記録は2003年6月プラハ国際で記録した84m86(アジア記録、世界歴代4位)。著書に『ゾーンの入り方』(集英社新書)など。

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