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あの人のカラダマネジメント術

49歳の現役プロトレイルランナーが語る「老いない秘訣」

プロトレイルランナー鏑木毅選手の健康マネジメント術(3)

 高島三幸=ライター

 だからラッキーでした、このスポーツと出合えたのは。だって、苦しいことでさえ人生の壮大な遊びのように楽しめているのですから。誤解を恐れずに言うと、人生そのものも遊びのように考えれば、苦悩したり葛藤したりすることも乗り越えられそうな気がします。

老いによって最も低下した力とは

「脚で地面を蹴り出すことの連続、それがランニングなんですが……」

 先日、鹿屋体育大学で全身の筋力などの数値を計測しました。すると、2009年にトレイルランニングの最高峰の大会「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」(UTMB)で世界第3位になった時と、9年後の今の数値はほとんど変わっていませんでした。それは私の仮説が正しかったと立証することなので喜ばしいことではあるのですが、唯一、大きな変化があったんです。それは、バンッと瞬間的に脚で地面を蹴り出す力が半減していたことでした。ランニングにおいて最も重要な能力なので、それはもうショックでしたね。

 これこそ老いによる数値の低下です。ランニングはジャンプの連続動作ですので、この数値の低下を食い止めるにはジャンプトレーニングが必要だと思った私は、例えば、スキージャンプの葛西紀明選手といったあらゆるトップアスリートの練習を参考にしながら、今も試行錯誤しています。

 ただ難しいのは、ジャンプトレーニングを重点的にやると、何かの能力が落ちるリスクもあることです。全体の平均的なレベルを探りながらトレーニング内容を考えるのは楽しい半面、本当に難しい。年齢を重ねると、「この調整方法をすれば、試合にピークを合わせられる」といった、昔の成功体験も効果がなくなってしまいます。発想を狭めるので成功体験が邪魔になるケースもあるのです。だから、「この年齢ならどんなトレーニングだったら効果があるのかな」などと考えて、常に新しい目標と課題を設定しながらチャレンジするしかない。50歳になっても世界に通用するという成功を収めたら、実体験から得た知見を多くの方に発信し続けていきたいとも思っています。

 2019年、50歳になる私は、もう一度UTMBに挑戦します。プロアスリートとしての最終局面を実感することが増えてきた今、世界最高峰の舞台で走るのは、最後の機会になるかもしれません。老いを受け入れ、老いにあらがいながら、大会の当日まで人生の集大成にするための準備に全力を注ぐつもりです。

 私が走るのは、何かにチャレンジすることで、何歳からでも自分の人生を高めることができるというメッセージでもあります。1人でも多くの方が、年だからと諦めずに、少しでも何かに挑戦してみようと思ってくださったり、参考になることがあったりすれば、これほどうれしいことはありません。

(インタビュー写真:厚地健太郎)

◆プロトレイルランナー鏑木毅選手の健康マネジメント術

第1回

疲れ知らずの人が実践する「スキマトレーニング」と「ながらストレッチ」

第2回

「抗酸化」「低糖」で40代で持久力向上を実現

第3回

49歳の現役プロトレイルランナーが語る「老いない秘訣」

鏑木毅(かぶらき つよし)さん
鏑木毅(かぶらき つよし)さん 1968年群馬県出身。早稲田大学競走部で箱根駅伝を目指すも故障で断念。群馬県庁に就職し、28歳でトレイルランニングに出合い、40歳でプロ選手に。2009年世界最高峰レース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」(UTMB)で3位。同年全米最高峰レース「ウエスタンステイツ100マイルズ」で2位。2019年50歳で再びUTMBに挑戦すると表明。新著に『日常をポジティブに変える 究極の持久力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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