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あの人のカラダマネジメント術

「抗酸化」「低糖」で40代で持久力向上を実現

プロトレイルランナー鏑木毅選手の健康マネジメント術(2)

 高島三幸=ライター

 こうした食品やサプリメントによる抗酸化の作用は、人によって実感できる効果に差はあるでしょうが、私の場合は、自身の体に合っていたのだと思います。今も毎日アスタキサンチンを摂取しています。

糖ではなく、脂肪をエネルギーに変える体になる

 「抗酸化」に加え、老化による持久力の低下を防ぐために意識しているのが、「低糖」です。簡単に言えば、血糖値が上がりにくい食事を心がけているということ。例えば、野菜から食べて、糖質の多いご飯類を最後に食べたり、白米より血糖値が上がりにくい玄米を食べたりするということ。間食も、40歳ごろから、血糖値が急激に上がりやすいチョコレートやあめより、ナッツやチーズ、果物を選んだりするようにしました。

「トレイルランニングで完走するには、脂肪をエネルギーに使った方がいいんです」

 低糖を意識したきっかけは、海外で外国人選手と一緒に合宿した時でした。マラソン大会などに参加される方は、試合前日にパスタなどの炭水化物を摂取されるケースが多いと思います。カーボローディング(*1)と言いますが、私も走る前にせっせとエネルギーになる炭水化物を蓄えていました。すると、現地の選手たちに笑われたんです。「何やってるの? トレイルランニングの世界ではカーボローディングは誰もやらないよ」と。

 糖エネルギーは一般的な成人男性で2500kcal程度しか体にストックできないとされ、これではトレイルランニングを完走するエネルギー量としては足りません。それに対して脂肪1kg当たりのエネルギーは約9000kcalといわれ、理論上、新たなエネルギーを取り込むことなく、約160kmを20時間以上かけて走破できるだけのエネルギーになるそうです。だから、数時間で枯渇してしまう糖質をあてにせず、身にまとった脂肪をエネルギーとして優先的に使える体にする方がいい、というのがトレイルランニング界のトップランナーたちの考えでした。

 日ごろから糖質を多く取っていると、血糖値が上がりやすくなり、脂肪よりも糖をエネルギーとして優先的に使う体質になるそうです。でも、その外国人選手たちのように、糖をエネルギーとして優先的に使う体ではなく、脂肪をエネルギー源にする体にシフトさせれば、体脂肪の燃焼効率が上がり、持久力が増すとのこと。なるほどと思った私は、「低糖」の方法について考え、実践することにしました。

 さらに、先ほど「アスタキサンチンはミトコンドリアを活性化する」という話をしましたが、活性化させることにより脂肪をエネルギーに変えやすい体質になることが期待できます。そこで、「低糖」と「抗酸化」を一緒に実践しながらトレーニングを積んでいった結果、脂肪をエネルギーに変えやすい体を手に入れることができました。走っていても、より速く長く動き続けられる体質に変わったことを実感したのです。つまり持久力が向上したということです。

 私は「低糖」を実践していますが、それはあくまでもトレイルランニングのような長時間走り続けるスポーツでの持久力向上のためであって、他のスポーツにも低糖がいいかどうかは分かりません。体質や体型、代謝には個人差があるので、合う合わないといったこともあります。ただ、血糖値の上がりにくい食事は、食後の眠気を防ぎ集中力やモチベーションを高く保ちやすくするなど、一般のビジネスパーソンにとってもメリットがあるといわれています。

 いずれにしても、急激に糖の摂取を減らしすぎるとコンディションに悪影響を及ぼすことがあると聞くので、何事もほどほどに。よくいらっしゃるのが、「無糖」を意識して、お米やパン、甘い物も一切取らない方です。でも、それはかえって脂肪の燃焼を阻害するといわれていますし、やりすぎはあまりよくないように思います。ご飯を減らしておかずを増やすなど低糖からスタートし、血糖値が上がりにくいように段階的に食生活を改善する方が継続しやすいのではないでしょうか。

 私自身、低糖を実践していると言いながらも、オフシーズンになると、子どもと一緒にラーメンを食べに行くことがあります。あまりストイックになりすぎず、たまには「がんばったご褒美」を自身にプレゼントすることも、ストレスをためずに継続できるコツだと思います。

*1 レース数日前から、おにぎりやパスタなど炭水化物を普段より多く食べ、体内に糖質をため込む方法

※記事中で触れている「低糖」については、アスリートである鏑木氏の意見であり、極端な低糖をお勧めしているものでありません。安易に真似ると体調に悪影響を及ぼす場合もありますので、注意が必要です。

(インタビュー写真 厚地健太郎)

◆プロトレイルランナー鏑木毅選手の健康マネジメント術

第1回

疲れ知らずの人が実践する「スキマトレーニング」と「ながらストレッチ」

第2回

「抗酸化」「低糖」で40代で持久力向上を実現

第3回

49歳の現役プロトレイルランナーが語る「老いない秘訣」

鏑木毅(かぶらき つよし)さん
鏑木毅(かぶらき つよし)さん 1968年群馬県出身。早稲田大学競走部で箱根駅伝を目指すも故障で断念。群馬県庁に就職し、28歳でトレイルランニングに出合い、40歳でプロ選手に。2009年世界最高峰レース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」(UTMB)で3位。同年全米最高峰レース「ウエスタンステイツ100マイルズ」で2位。2019年50歳で再びUTMBに挑戦すると表明。新著に『日常をポジティブに変える 究極の持久力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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