「抗酸化」「低糖」で40代で持久力向上を実現
プロトレイルランナー鏑木毅選手の健康マネジメント術(2)
高島三幸=ライター

そんな彼が60手前の年齢にもかかわらず世界の第一線で戦い続けている姿を実際に見た時、感動で震えました。なぜ彼はこの年齢であれほどのパフォーマンスを発揮できるのか。彼は老化とどう対峙しているのか。その謎を知りたくて、帰国後、私は必死に文献を集めて、少しでも関連しそうな資料を片っ端から読みあさりました。
そうしてたどり着いたのは、マラソンの持久力はスポーツ科学によってある程度解明されているけれど、100km、200km級のトレイルランニングにおける持久力については、根源的な部分は究明されていないということでした。
そこで私は、尊敬するオルモ選手はどんな練習をしているのか、どんなことを意識しているのかと想像しながら、仮説を立てて自分の体で実証することを繰り返しました。その「老いへの抵抗」のカギとして重視したのが、「抗酸化」でした。
最初に始めたのが「活性酸素を取り除くこと」
人が呼吸で取り込んだ酸素の一部は、「活性酸素」という酸化力の強い成分として体内に残ります。これがたまりすぎると、細胞を傷つけ、老化、がん、動脈硬化、その他多くの疾患を招くといわれています。アンチエイジングのためには、活性酸素の発生を抑制したり、発生した活性酸素を速やかに分解処理したりする必要があります。そのためには「抗酸化作用」を持つ成分を体内に満たしておく必要があるといわれています。
そうしていろいろ研究した結果、私の体に合うと実感したのが、「アスタキサンチン」という抗酸化成分でした。β-カロテンやリコピンなどと同じカロテノイドの一種で、エビやカニなどの甲殻類、サケやタイといった魚類など、主に海洋系の食材に多く含まれています。

著書『日常をポジティブに変える 究極の持久力』で、予防医学などを専門にされている京都府立大学大学院生命環境科学研究科准教授の青井渉先生と対談しました。その中でも取り上げていますが、ビタミンA、C、Eや、ウコンの色素であるクルクミンなど様々な抗酸化成分がある中で、アスタキサンチンは体内で糖や脂肪を分解してエネルギーを生産するミトコンドリアの機能を活性化させることが報告されているなど、老いに対しても効果があると考えられています。
そのアスタキサンチン、私はサプリメント製造販売会社がスポンサーになったこともありサプリメントで摂取することが多いですが、飲み始めてから、いくつかの効用を感じました。まず朝の目覚めがよくなり、疲労感が和らぐようになりました。周囲にも分かりやすい変化としては、当時ストレスで増えていた白髪が減り始め、後頭部の薄毛の進行が止まり、少しずつ髪の毛が増え始めました。何よりもうれしかったのが、飲み始めて3カ月ぐらいで、地面を蹴る力が向上したのを感じたことです。
トレーニングメニューを大きく変えたわけではありませんが、脚力をはじめとした筋力を取り戻し、より質の高いトレーニングを積めるようになった気がしました。40代に入ってから参加したレースでは、最後まで疲労感が軽く、全力でゴールすることができました。
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