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あの人のカラダマネジメント術

中山雅史さん ユース選手に伝えたプロで生き残るすべ

不屈のサッカー人生(3)

 高島三幸=ライター

「自分の“替え”はいくらでもいる」と早く気づいたもん勝ち

ユースの選手を指導する立場にもなって得られた気づきはありますか?

 高校生の練習を見ていると、今の自分にはできない切り返しの速さなど、ハッとさせられるプレーがあります。一方、一番基本的なものをやれていない選手もいる。例えば、「ボールを取られたら素早く相手を追う」「相手に食らいつく」という動きはまさしくそうで、そこにかける思い一つで改善できます。でも僕が「やれよ」と言ってもできない選手は多く、その基本ができるかできないかで、監督の目に留まる選手になれるかなれないかが分かれる。自分のサッカー人生を振り返っても、プロの世界で生き残っていくすべは、そこなんです。自分との闘いに絶えずアプローチできるかどうかが大事。その基本を突き詰めていけば、その選手の武器になると思うんですよね。

 クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシになりたいと思って練習してもいいんです。でも、あんなスーパースターになれるのは、ほんの一握り。スーパースター以外のその他大勢は、“替え”がききます。“替え”のきかない選手になるには、しつこくボールに食らいつくハングリー精神や、現状を見ながら自分で判断できる力などをアピールするしかない。それが監督の目に留まって初めて、相手と戦うピッチに立つことができます。僕が言っているのは、プロになって、その他大勢の中で生き残っていくためにはどうしたら良いのかなんです。「『自分の“替え”はいくらでもいるんだ』と早く気づいて、実践したもん勝ちだよ」とユースの選手たちには言いました。

ユース世代の指導者も経験し、今は新たにコーチとして古巣に戻った
ユース世代の指導者も経験し、今は新たにコーチとして古巣に戻った

すべてを否定せず、教えない指導

指導側になって、難しい点はありますか?

 指導は簡単ではないです。特に高校生には、すべてをダメだと否定するのは良くないなと思います。その選手の可能性を潰すことにもなりかねないから。「良いプレーは良い」と伝えることが大事だし、僕はどちらかというと熱が入って、つい答えというか自分が考えるこういうプレーをするべきだと言ってしまう方ですが、すべてを教えず、「どういう考えで今のプレーをしたの?」と選手の意見を聞いて、自分で答えを導き出せるようにサポートすることが大事だと学びました。

 指導者を経験すると、選手の方が楽だなぁと思います。一方、指導者の視点を持つことで、選手としての自分へのメリットにつながるとも思っています。創設3年目のユースの選手からたくさん学びましたが、その彼らが、ジュビロ磐田と名古屋グランパスのユースに勝って初めて全国大会(日本クラブユースサッカー選手権大会)に出場したんです。すごくないですか? うれしかったですが、同じ選手として負けてられない、悔しいなと思ったりもします(笑)。

中山さんにとって、今の時点でサッカーとはどんな存在ですか?

どんなに苦しくても乗り越えてきた中山さん。サッカーを心底愛しているのは間違いない
どんなに苦しくても乗り越えてきた中山さん。サッカーを心底愛しているのは間違いない

 W杯などの舞台を経験すると、あの歓声と興奮は忘れられないですよね。もちろん、あの舞台には立てないけれど、ピッチに立ってみんなと一緒にプレーして興奮を味わいたい。そう思わせてくれるものです。それに加えて、サッカーは自分の最上級の“喜怒哀楽”を運んできてくれるものだと思っています。リハビリがうまくいくと喜びに変わるし、痛みが再発すると悲しさや悔しさ、苦しさを味わう。サッカーに関連した仕事をいただくことで、楽しさも得られます。

 実は、2020年の4月末にも手術しました。2019年末からお尻が痛かったのですが、年が明けてMRIを撮ったら、お尻の筋肉が骨からはがれてかろうじて皮一枚でつながっているみたいな状態でした。「もはや、これまでか」と思いました。当時はまだ、アスルクラロ沼津との契約期間が残っていましたし、手術をしないと日常生活にも支障が出るので、リハビリして改善の余地があるなら、オペをやるしかないと判断しました。ボルトを坐骨結節に打ち込むなどして、はがれたお尻の筋肉をくっつけるイメージの手術です。

 先生には無理を言って、オペした翌日に退院しました。痛かったですが、6週間ほど松葉づえ生活を続けて。すると、右足に体重をかけられないので筋力が落ちて、膝が痛くなるんですよ。リハビリやトレーニングのやり直しになるんだと思いました。でもそれをやらなければ走れないし、やるしかないと思って、今はやっと歩けるまでになりました。

 膝のトレーニングに集中したいのに、また違う部位もリハビリしなければいけないという悔しさもあります。でも、その悔しいという感情も含めて、やっぱり現役にこだわりサッカー中心の生活だからこそ得られるものなんですよね。サッカーは僕の人生を豊かにしてくれるものだと思っています。

(写真 厚地健太郎)

◆不屈のサッカー人生

第1回

中山雅史さん ケガと闘い現役にこだわり続けた日々

第2回

中山雅史さん つらいリハビリ続けたから分かったこと

第3回

中山雅史さん ユース選手に伝えたプロで生き残るすべ

中山雅史(なかやま まさし)さん
サッカー元日本代表、ジュビロ磐田コーチ
中山雅史(なかやま まさし)さん 1967年生まれ。静岡・藤枝東高、筑波大学を経て、90年にヤマハ発動機サッカー部(現・ジュビロ磐田)に入団。98年、Jリーグ年間最多の36ゴールを記録(当時)し得点王と最優秀選手(MVP)、2000年にも得点王に輝く。1998年フランスW杯、2002年日韓W杯の2大会に出場し、1998年フランスW杯のジャマイカ戦で日本人選手としてW杯初ゴールを決めた。2010年コンサドーレ札幌に移籍。12年第一線を退くことを発表。15年アスルクラロ沼津と契約。20年S級ライセンスを取得。21年ジュビロ磐田のコーチに就任。同時にYouTubeを始める。新著に『再起は何度でもできる』(PHP研究所)

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