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あの人のカラダマネジメント術

中山雅史さん つらいリハビリ続けたから分かったこと

不屈のサッカー人生(2)

 高島三幸=ライター

悪あがきだと思われても、精いっぱいやっていきたいと語る中山さん。公に語ることで、それをチャレンジするための原動力にしているという

すごいリハビリチームですね。

 何人もの専門医を受診した結果、すべて「この膝でサッカーなんて無理」という答えだったなかで、サッカーがしたいという僕の思いを知って協力してもらえることは本当にありがたかったです。情報を共有し意見交換しながら、トレーニングやリハビリ、治療をトータルでサポートしてもらえていることも助かっています。

リハビリ1つとっても、さまざまなやり方や新しい方法も出てくる中、自分に合うものを取捨選択するのは難しいと思います。どんな考えで選んでいるのでしょうか。

 本当にさまざまなアプローチがあって、リハビリや治療に関するいろんな情報が耳に入ってきます。そうした情報を積極的に得ることは大事です。でも、おっしゃる通り何がよくて何が合っているのか、自分ではなかなか判断できません。だからといって、あれもこれもとつまみ食いのようなリハビリではダメだと思うんです。芯が通っているというか、自分が納得し、成果につながる可能性を信じられるものじゃないと、全身全霊で孤独なリハビリや治療に取り組めません。信頼できるチームの皆さんに納得できるまで話を聞き、分からないことは質問し、相談することが大事だと思います。その時の自分に一番いいと思えるメニューを一緒に選んだり、任せたりする。そして、やると決めたら信じてやる。僕はただひたむきにベストを尽くすだけです。

 悪あがきだと思われても、とにかく、自分のやれることを精いっぱいやっていきたいと思うんです。「あの時、ああだったしな…」「あの時こうしておけば」といった後悔を少しでもなくしたいし、「この先、どうなるんだろう」と不安に思っても何も変わりません。

 1998年のフランスワールドカップのクロアチア戦で、しっかりとボールを捉えたと思ったシュート(*3)がありましたが、もしゴールが決まっていたら、今サッカーをやっていないかもしれません。あれを決めていたらその後の人生、違っていたのかなとも思います。でも過去は変えられません。であれば、今を大切に一生懸命やるしかない。とにかく何かを変えるためには、行動を起こさなきゃと思うんです。偉そうなことを言っていますが、こうして公言してチャレンジするための原動力にしています(笑)。

*3 中田英寿選手からパスを受けて中山選手がシュートしたものの、相手ゴールキーパーのファインセーブに阻まれた。

現役を続けたからこそ分かる、三浦知良選手のすごさ

同じ50代でチャレンジされている選手として、三浦知良選手もいらっしゃいますが、中山さんからはどのように見えているのでしょうか。

 カズさんは別格だと思います。カズさんはカズさんのサッカー人生の突き詰め方があるだろうし、生き方がある。僕が彼と同じ土俵にいるなんて、全く思っていないです。

 カズさんの場合、体のメンテナンスはもちろんですが、シーズンへと入る前にキャンプで体をしっかり作って、チームメイトとのレギュラー争いを経て、先発になったりサブになったりを繰り返す日々を送っています。それを今までやり続けていることは、本当にすごいこと。ピッチにも立てていない僕とは、比較対象にならないです。

 ただ、僕は僕なりに50代を超えてもトレーニングを続けてきたので、「53歳で真剣にサッカーをやるってどういうことか」については誰よりも分かっているつもりです。相当しんどいことだし、それを継続していくことはもっとしんどいことだと、自分の身をもって体感しています。だからこそ、さらなる未知の世界に一人で突き進んでいるカズさんのすごさを、恐らく誰よりも実感できているし、伝えられると思っています。

「諦める」ために現役を続けてきた

中山さんも、その未知の世界というのを体感しているわけですよね。それはやはり幸せなことなのでしょうか?

 幸せであり、不幸せであり、期待があり、不安があり。だから自分の中で、「これだけやったけど、ここまでか」という気持ちになりたいなという思いはあります。諦めるためにやっているところはあるんです。

諦めるとは?

 「明らかにして、究める」といった意味で使っています。そのためにトレーニングをしています。「まだできるのに」「ああすればできたのに」という思いが残っている限り、未練がどんどん膨らみます。それがつきまとっているからこそ、明らかに究めるまで頑張りたい。「ここまでやったけれど、その先に行けない。でもここまでやったんだから!」という思いを持ちたいのです。

 本当に諦めが悪いです。でもこれは自分の性格というより、僕が好きで続けてきたサッカーだからこそ、それに対して「自分はどこまでやれるんだろう」という、サッカーを突き詰めたい気持ちの現れだと思います。

 ただ、それが体をむしばんでいくのであれば、そこはちゃんと考えなきゃいけないと、最近ようやく思うようになりました。毎年膝の検査をしていますが、MRIやレントゲン画像を見て現状維持や少し悪化したではなく、すごく悪化しているなと思ったときが、辞めどきなのかなとも思います。

好きで続けてきたサッカーなので、どこまでやれるかを突き詰めていると語る

第3回に続く)

(写真 厚地健太郎)

中山雅史(なかやま まさし)さん
サッカー元日本代表、ジュビロ磐田コーチ
中山雅史(なかやま まさし)さん 1967年生まれ。静岡・藤枝東高、筑波大学を経て、90年にヤマハ発動機サッカー部(現・ジュビロ磐田)に入団。98年、Jリーグ年間最多の36ゴールを記録(当時)し得点王と最優秀選手(MVP)、2000年にも得点王に輝く。1998年フランスW杯、2002年日韓W杯の2大会に出場し、1998年フランスW杯のジャマイカ戦で日本人選手としてW杯初ゴールを決めた。2010年コンサドーレ札幌に移籍。12年第一線を退くことを発表。15年アスルクラロ沼津と契約。20年S級ライセンスを取得。21年ジュビロ磐田のコーチに就任。同時にYouTubeを始める。新著に『再起は何度でもできる』(PHP研究所)

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