中山雅史さん ケガと闘い現役にこだわり続けた日々
不屈のサッカー人生(1)
高島三幸=ライター
ピッチに立てなくてもトレーニングを続ける理由
なかなかピッチに立てない中で、どうして孤独でつらいリハビリ生活を続けられるのでしょうか。
約8年も公式戦から離れているので、ピッチに立つのはなかなか難しいなと思う自分もいました。でもやっぱり純粋にサッカーが好きで、グラウンドに立ってみんなと練習したいから続けているんですよね。その先に試合があるのでしょうが、そこまで考える余裕はありませんでした。
「きついなあ、これだけやっても先が見えてこないよ」と、どうすればいいのか迷うことも一度や二度ではありませんでした。リハビリ中に痛みが出たら不機嫌になったり、筋トレの効果がなかなか現れなくて一歩ずつ上に登っていくことしか考えていませんでした。本来、トレーニングし続けることで結果に結びついて、自信につながりますが、そうした練習の成功体験も今ではマイナスになる場合が多く、トレーナーからは「昔の成功体験は忘れてください」と言われました。
葛藤がないと言ったら嘘になりますが、それでも「自分がやりたいことは何か」と考えると、やっぱりサッカーがやりたい。それがしんどいならやめればいいだけです。僕は、ただサッカーをやめることが嫌だから挑戦してきました。とすれば、自分が好きで挑戦しているのに、モチベーションが湧かないと口に出すのはおかしいだろうと思うわけです。
ネガティブな気持ちが続けば、ストレスがたまりそうですが。
たまりますが、考え方次第だと思います。例えば、僕がやってみて意外と効果があったのは、自分をカッコいいと思い込むこと。そして、自分の熱狂的なファンになることです。黙々とリハビリしている姿を人が見たら「ケガと闘っている中山、かっこいいと思うんじゃないかな」などと、勝手に思い込む。誰も見てなくても、「こうした地道な努力が本当の力になる」と、今まで以上に強くなった自分を想像しながら、自分で自分を盛り上げる。そんなイメージでリハビリトレーニングに取り組んできました。
50歳を超えてもアスルクラロ沼津という練習やリハビリできる場を与えてもらったのですから、そこに感謝して自分のやれることを精いっぱいやらなければいけないとも思っていました。何より後で「あの時、こうしておけば」という後悔を少しでもなくしたい。後悔する歳でもないんですけどね。
(第2回に続く)
(写真 厚地健太郎)
サッカー元日本代表、ジュビロ磐田コーチ
