バレーボール柳田選手 ケガ防止「調子よいときこそ冷静に」
一流アスリートの自己管理術(3)
高島三幸=ライター
小学生からバレーボールを始め、エリート街道を歩んできた柳田将洋選手。2016年のリオデジャネイロ五輪への切符を逃したのをきっかけにプロに転向し、ドイツやポーランドに単身で渡って、国内では得られない多くの経験を積んだという。海外でプレーすることの孤独、競技人生最大のケガ、コロナ禍での東京五輪延期などさまざまなハードルにどう対峙し、今どのような気持ちなのか伺った。

外国人選手はシーズン中も筋トレがハード
前回(「バレー柳田選手 海外武者修行で学んだ前向きマインド」)は、海外のプロリーグに入団して分かった、外国人選手と日本人選手のメンタルの違いなどについて伺いました。筋トレなどフィジカル面ではいかがでしたか?
僕のサーブやスパイクは、チームメイトにも「なんでそんなに反るの?」と言われるほど体を反るのが特徴です。なので、プレーを安定させるために下半身を鍛えるウエートトレーニングや、ボディーバランスを保つようなトレーニングを大切にしています。

海外に渡ったとき、外国人選手がどんな筋トレに取り組んでいるのか興味がありました。日本人に比べると体が大きいので、重い重量を持ったウエートトレーニングはあまりやらないのではと予測していたんです。でも実際は、シーズン中でもものすごく重い重量を持ってハードなウエートトレーニングしていました。驚きましたし、「あんな体格のいい選手があれだけトレーニングしているんだから、僕はもっと頑張らなきゃ」とモチベーションアップにつながりましたね。
海外のトレーナーは細かく指示を出さないので、選手自身が考えてやりたいトレーニングをトレーナーに相談し、メニューを組み立てていくようなイメージです。僕も自分の体と対話しながら練習メニューを考え、トレーナーにサポートしてもらいながら重い重量に挑戦していました。
「調子がいいときこそ冷静に」でケガ防止
そんな体格のいい外国人選手の中で結果を出さなければいけない状況だと、どうしてもケガと隣り合わせのハードな動きが必要になると思います。体のケアやメンテナンスで気をつけていた点は?
ポーランドのリーグにいた時は、プレー中に隣の選手と接触して左足首をケガしてしまい、シーズン半ばに帰国してしまいました。最初は捻挫だと思っていましたが、検査すると骨や靭帯を痛めていて、最低でも完治に2カ月かかると言われて。あんな大きなケガは、競技人生で初めてで焦りもあったのか、リハビリ後に開催された試合でスパイクを打ったとき、ブチっと音がして腹筋の肉離れも起こしてしまったんです。あの時期はしんどかったけれど、経験して思ったことは、「今、自分がどれくらい動けるのか」を分かっていれば、大きなケガを回避できるのではないかと。
それはなぜですか?
慢性的なケガは、毎日の十分なケアやメンテナンスで防げます。でも足首をケガした時のような突発的なケガは、自分の調子の良しあしに左右されるのではないかと思うんです。例えば、コンディションが良い日は気持ちも高揚して、「こんなに好調だから大丈夫!」と無理してリスクが高いプレーに挑みがちだし、ウオーミングアップも甘くなってしまうかもしれない。どんなに好調だと思っても一度冷静になって、「きょうの自分はどこまで動けているんだろう」と考える。すると、いつも以上に動くことに潜むリスクに気づいて、「きょうは念入りにウオーミングアップをしておこう」「このプレーのときに気をつけよう」などと意識することができ、ケガ防止につながるはずです。だから、日ごろからプレーを振り返る習慣は大事だと思います。
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