日本経済新聞 関連サイト

ようこそ ゲスト様
日経Gooday TOP  > からだケア  > あの人のカラダマネジメント術  > 鈴木明子さん スケート選手としての転機になった「摂食障害」  > 3ページ目
印刷

あの人のカラダマネジメント術

鈴木明子さん スケート選手としての転機になった「摂食障害」

フィギュアスケート五輪元日本代表の鈴木明子さんに聞く(上)

 高島三幸=ライター

 帰宅すれば、まず体重計に乗りました。あの頃は1日8回ぐらい乗っていて、体重が少しでも増えていると、もうパニックになった。水を飲んだだけで増えるのは当たり前なのに、冷静に考えられなくなるのです。

摂食障害から脱却するきっかけとなった母の一言

「摂食障害を患った私を母が受け入れてくれた。それが回復のきっかけでした」
[画像のクリックで拡大表示]

 この病気の本当の怖さは、脳のコントロールができなくなることだと思います。48kgだった体重はたった4~5カ月で32kgまで落ち、当然体調が悪くなって練習を休むようになって、大学にすら行くこともつらくなった。「これ以上痩せたら危ない!」と分かるはずなのに、食べれば止めどなく太るような気がしてならず、食べられませんでした。

 さすがに長久保コーチや大学の部長もおかしいと気づき、実家に帰って病院に行きなさいと言われました。病院に行くことはつらかった。だって、「体重の数値だけが頑張った証し」だったから。それに「摂食障害」という病名をつけられてしまうと、それまでの努力がムダになり、自分を否定されることになります。だからかたくなに「私は病気じゃない」と言い続けていましたね。そんな中、医師からは、このままではトップレベルの競技復帰は不可能だと言われ、目の前が真っ暗になりました。

 たった数カ月でガリガリになって帰ってきた娘を見て母は言葉を失い、最初は病気を、そして病気を患った私を、受け入れられない様子でした。

 母に「食べなさい」「お願いだから食べて…」と言われるほど、せっかく作ってもらったご飯がどうしても食べられない。そんな「食べる」という本能的な行為ができないことに葛藤し、自分を責め、誰からも認められないつらさに落ち込みました。体力がなさ過ぎて寝たくても眠れないし、スケートをやりたいと思っても電車に乗ってリンクまでたどり着けない。「生きている意味があるのかな」。そんなことを思いながら、どん底にいる気分でした。

 「食べられるものから食べよう」

 私が回復するに至ったきっかけは、母からのこの一言でした。「食べなさい」「野菜とお米も食べないと」という言葉から、「食べたいものを食べればいいわよ」という言葉に変わり、私は母に摂食障害を患った自分を受け入れてもらえているような感覚を覚えました。「何もできていない私でも、生きていてもいいんだ」と思えるようになったんです。少しずつ回復して母が作ってくれたものを食べたとき、「ああ、食べてくれた」と母は泣いていました。

 ※次回記事「苦難を乗り越えるのに重要な『イメージ喚起力』」に続く

(写真:鈴木愛子)

◆フィギュアスケート五輪元日本代表の鈴木明子さんに聞く

第1回

鈴木明子さん スケート選手としての転機になった「摂食障害」

第2回

鈴木明子さん 苦難を乗り越えるのに重要な「イメージ喚起力」

第3回

鈴木明子さん 「負の思考」を吐き出してストレス解消

鈴木明子(すずき あきこ)さん
鈴木明子(すずき あきこ)さん 1985年愛知県出身。6歳でスケートを始め、15歳で全日本フィギュアスケート選手権4位。18歳で摂食障害を患い、一時は体重48kgから32kgに。2004年に復帰し、06-07年ユニバーシアード冬季競技大会優勝。09-10年グランプリシリーズ中国杯初優勝。バンクーバーオリンピック8位入賞。12年世界フィギュアスケート選手権では日本人最年長27歳で銅メダル獲得。14年ソチオリンピック個人8位。現在はプロフィギュアスケーター、振付師として活躍。著書に『ひとつひとつ。少しずつ。』(KADOKAWA)など。

先頭へ

前へ

3/3 page

RELATED ARTICLES関連する記事

からだケアカテゴリの記事

カテゴリ記事をもっと見る

FEATURES of THEMEテーマ別特集

  • もの忘れと認知症の関係は? 認知症リスクを下げる生活のポイントNEW

    年を取っても認知症にはならず、脳も元気なまま一生を終えたいと誰もが思うもの。しかし、「名前が出てこない」「自分が何をしようとしたのか忘れる」といった“もの忘れ”は、中高年になると誰もが経験する。⾃分は周りと比べて、もの忘れがひどいのでは? ひょっとして認知症が始まったのか? と不安になる人も多い。このテーマ別特集では、もの忘れの原因や、将来の認知症にどうつながるのか、認知症を予防するにはどうすればいいのかについて、一挙にまとめて紹介する。

  • 痛風だけじゃない!「高すぎる尿酸値」のリスク

    尿酸値と関係する病気といえば「痛風」を思い浮かべる人が多いだろう。だが、近年の研究から、尿酸値の高い状態が続くことは、痛風だけでなく、様々な疾患の原因となることが明らかになってきた。尿酸値が高くても何の自覚症状もないため放置している人が多いが、放置は厳禁だ。本記事では、最新研究から見えてきた「高尿酸血症を放置するリスク」と、すぐに実践したい尿酸対策をまとめる。

  • 早期発見、早期治療で治す「大腸がん」 適切な検査の受け方は?

    日本人のがんの中で、いまや罹患率1位となっている「大腸がん」。年間5万人以上が亡くなり、死亡率も肺がんに次いで高い。だがこのがんは、早期発見すれば治りやすいという特徴も持つ。本記事では、大腸がんの特徴や、早期発見のための検査の受け方、かかるリスクを下げる日常生活の心得などをまとめていく。

テーマ別特集をもっと見る

スポーツ・エクササイズSPORTS

記事一覧をもっと見る

ダイエット・食生活DIETARY HABITS

記事一覧をもっと見る

からだケアBODY CARE

記事一覧をもっと見る

医療・予防MEDICAL CARE

記事一覧をもっと見る

「日経Goodayマイドクター会員(有料)」に会員登録すると...

  • 1オリジナルの鍵つき記事鍵つき記事がすべて読める!
  • 2医療専門家に電話相談できる!(24時間365日)
  • 3信頼できる名医の受診をサポート!※連続して180日以上ご利用の方限定

お知らせINFORMATION

日経Gooday新型コロナ特設

SNS

日経グッデイをフォローして、
最新情報をチェック!

RSS

人気記事ランキングRANKING

  • 現在
  • 週間
  • 月間

NIKKEICopyright © 2021 Nikkei Inc. All rights reserved.