プロの体調管理術「どんな時も起床時刻は変えない 」
人気トレーナー・中野ジェームズ修一さんのカラダメンテ術【2】
中野ジェームズ修一
サーカディアンリズムを乱さない生活が体調を維持する
人間には、サーカディアンリズムという約24時間周期で変動する生理現象があります。それに合わせた生活をするのが、体調を崩さないためには大切なのです。ただ厄介なのが、厳密に24時間周期ではないということです。どこかのタイミングで調整しないと、だんだん夜型のリズムに変調していくのです。そこで大事になるのが、朝、太陽の光を浴びること。こうすることで、脳内物質であるセロトニンが分泌されます。それによって体が活性化し、リズムの狂いを修正することができるのです。
このサーカディアンリズムは、概日リズムや単純に体内時計などともいわれますが、調整方法を覚えると時差ボケの予防にも役立てることができるんですよ。
例えば海外遠征に同行する時、飛行機に乗った時点で、日本は昼間でも、現地があと2時間で夜中の12時になるとします。その場合、私は睡眠導入剤を利用してでも寝ることにしています。その時点で現地時間に合わせておくと、時差ボケせずに済むんです。到着してから私が時差ボケで参っていると、選手に適切なアドバイスができませんからね。逆に日本を出発するのが夜で現地が朝や昼であれば、頑張って寝ないようにします。時差ボケをフライト中に調整してしまうのです。
ただ3年ほど前に1週間休みをもらって、完全なプライベートでロサンゼルスに遊びに行ったときは失敗しました。自分が以前住んでいた場所ですし、仕事でもないので、先ほど言ったような調整をせず、飛行機の中で映画を観て過ごしたのです。そうしたら滞在中、ずっと体がだるくて。帰国してからも、少しの間、おかしな感覚が残って、調整に時間がかかってしまいました。やはり、リズムを崩さないようにすることは大切です。
就寝前に脂肪分が多い食事をしない
睡眠の質を高めるという点で言うと、スケジュールの関係で夕食が遅くなってしまった場合、脂肪分が多い食事はとらないようにしています。脂肪は1gで9kcalと非常に効率の良いエネルギー源ですが、どうしても消化吸収に時間がかかってしまうからです。
例えば夕食にサーロインステーキを食べたとします。すると、たんぱく質も多いですが脂身も多いので、消化するのに4時間半から5時間もかかります。そんなものを寝る直前に食べてしまうと、内臓は朝起きるまで働き続けることに。当然、エネルギーも使われるので、自分では寝たつもりでも体が休まりません。結果、サーカディアンリズムも崩れてしまいます。
私は夜遅い食事の時には、低脂肪のものを満腹にならない程度に食べますね。一番多いのが、レトルトのおかゆやゼリーといった消化しやすいもの。これは体脂肪を増やさない、つまり太らないようにするためにも大切です。
脂肪分の多いもの
(サーロインステーキ、揚げ物、ポテトチップスなど)
低脂肪で消化しやすいもの
(おかゆ、ゼリーなど)
何も食べないまま夜遅くまで働くと、帰宅後についつい食べ過ぎてしまうものですが、その「むちゃ食い」が睡眠を台無しにし、体のリズムを狂わせます。ほんの少しの気持ちの切り替え、心がけで体調を崩さずに済むので、忙しい人ほど体のリズムをもっと意識してください。
(ライター 松尾直俊)
人気トレーナー・中野ジェームズ修一さんのカラダメンテ術
第1回 1日30品目は過去の話。人気トレーナーが実践する「14品目食事術」第2回 プロの体調管理術「どんな時も起床時刻は変えない 」
第3回 甘いもの食べたら走る!「目標を持った体調管理術」に学ぶ
第4回 ストレスのもとからは、逃げるが勝ち
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
