30過ぎたら見直す食習慣 ファイトケミカルが体を守る
東海大・川田医師が提案する30~40代で身に付けたい健康習慣(1)
二村高史=フリーライター
30代は健康の曲がり角だ。徐々に代謝が下がり、20代と同じ生活を続けていてもなぜか太りやすくなったりする。また、今後の人生のためにも30代での生活習慣は大切である。よい習慣をつけておけば、50代、60代になってから病気になるリスクを確実に減らすことができる。とはいえ、世の中には健康情報があふれており、何を信用すればよいのかわからないという人も多いだろう。そこで、最新の研究成果を踏まえ、エビデンス(科学的根拠)に裏打ちされた健康法を、東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科の川田浩志教授にうかがった。食事、運動、メンタルヘルスという3つの視点から、数回に分けて紹介していこう。
地中海風の食事スタイルを取り入れる
今回は、食事の健康習慣について考えていきたい。健康雑誌やネットの健康記事を調べると、○○食事法、××健康食といった食事法は山ほど出てくるが、その多くは科学的根拠がなかったり、長期的な安全性が確認されていなかったりする。はたして、何を信用すればよいのだろうか。
「現在、病気を予防して死亡リスクを低下させる科学的エビデンスが最も多くあり、世界中でその効果が認識されているのは、地中海風の食事スタイルです」と東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科学の川田浩志教授は語る。

地中海風の食事スタイルとは、イタリア、スペイン、ギリシャなどの南ヨーロッパを中心にした地中海沿岸に住んでいる人びとの伝統的な食事スタイルのことだ。その特徴は、野菜・フルーツ、穀類、オリーブオイル、豆・ナッツ類、魚などの食品を主体としていること。それに、適量のワインが加わる。
これまで、数々の調査・研究によってその有効性が認められてきた。
「例えば、1995~2008年に実施された12個の調査研究(延べ157万人が対象)をイタリアの研究者らがまとめて分析した結果によると、なるべく地中海風食生活を心がけるようにすると、生活習慣病を含めたさまざまな病気にかかって死亡するリスクが明らかに減ることがわかったのです。たとえば、心血管疾患による死亡リスクは9%低下し、がんの罹患率と死亡率は6%低下することがわかりました(*1)」と川田教授。
40代以上における健康の最大のリスクは、なんといっても肥満。内臓脂肪がたまることで自覚症状がないままにメタボリックシンドロームの状態となり、糖尿病や脂質異常症などのさまざまな生活習慣病を発症させ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすという恐ろしい「病気のドミノ現象」を招くことはご存じだろう。最近では、メタボがあるとがんになりやすいともいわれている。
だが、地中海風の食事スタイルは、高血圧、高血糖、脂質異常を起こしにくいために、メタボになりにくく死亡率が低く抑えられるというわけだ。
「地中海風食事スタイルといっても難しいことはありません。日本の伝統的な食事スタイルは野菜や豆、魚中心で地中海風に近いものといえます。それに加えて、自分なりにアレンジするのがいいでしょう」(川田教授)
川田教授は、食生活にぜひ加えてほしいという食品を3つ挙げてくれた。それが、「野菜とフルーツ」「ナッツ」「ヨーグルト」だ。それぞれの食品の健康効果を取り上げながら、どのようにとればよいのかを紹介していこう。
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