“いい脂肪”なら、かなりの量を食べても太らない!
「ローファット」の時代は終わり、正しい種類の脂肪をとる時代に――『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』の著者に聞く(第3回)
柳本操=ライター
全米ベストセラー『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事(原題:THE BULLETPROOF DIET=完全無欠ダイエット)』には、IT企業家のデイヴ・アスプリーさんが、15年間で30万ドルもの私財を投じ、世界中のダイエット法を自分のカラダで徹底的に検証した結果が集約されている。デイヴさん自身、50kgの減量、IQ20ポイントアップという結果を出した。
日経Goodayは、来日したデイヴさんに直接取材して話を聞いた。最終回となる今回は、「良質の脂肪をとることの大切さ」について詳しく聞いていく。さらにデイヴさんの日頃の運動習慣や食生活についても聞いた。(第1回、第2回も併せてお読みください)
ローファットはむしろ体にマイナスに働く
デイヴ・アスプリーさんが薦めるシリコンバレー式「完全無欠ダイエット」の基本メニューとなる「完全無欠コーヒー」は、コーヒーにバターやMCTオイル(ココナッツから抽出した中鎖脂肪酸オイル)という「脂肪」をたっぷり加えるもの。「朝からそんなに脂肪をとって、太らないの!?」と不思議に感じる読者も多いかもしれない。
デイヴさんは「完全無欠ダイエット」において、「良質な脂質をとる」ことを極めて重要なこととして位置づけている。著書の中でも、「『脂肪と食べると太る』という考えは、一種の神話に過ぎない。正しい種類の脂肪はヘルシーで、生命維持に不可欠。正しい脂肪は、クリーンに燃焼し、栄養たっぷりで満足をもたらすエネルギー源で、体も脳も最大限に機能させてくれる」と説明している。
そこで今回は、「脂肪」について詳しく聞いていこう。
脂肪はハイカロリーなので、あまりとらない方がいいという認識の方が多いと思います。実際、油ギトギトの料理や、高脂肪のケーキなどは典型的な悪者となっています。その一方でDHAとEPA(魚油)のように、積極的にとるべき油もあります。最近の「ローカーボ(低糖質)」の流れの中で認識も変わりつつあるように思いますが、多くの人にとって、脂質はまだ「悪者」のイメージが強いと思います。私達は、これから脂質とどう付き合っていけばいいのでしょうか。
デイヴさん 脂肪について考えるには、歴史的背景も知っていただきたいと思います。1950年代にアンセル・キーズという科学者が「飽和脂肪酸は心臓病の原因になる」と主張し、栄養業界を揺るがしました。それを受け、アメリカで低脂肪(ローファット)ダイエットの大流行が起こり、いまだに「ローファット」のブームは続いています(詳しくはこちらの記事を参照)。
食品メーカーは競うように低脂肪食品を作りました。加工食品から脂質を除去するときには、何かで置き換えなくてはなりません。そこで、過剰な糖分やコーンシロップが加えられたのです。
当然、こういった食品を摂取し続ければ悪影響が出ることは避けられません。糖質を多く含有する低脂肪食品はインスリン値を急上昇させる。その結果として「甘いものが食べたい」という衝動を高めることになります。“太る悪循環”へと導くのです。
一方の脂肪は、グラム当たりのエネルギー量が他の栄養素より多いので、必要とする場所までエネルギーを届けるのに最も効率的で、糖やタンパク質と比べてインスリン値に与える影響も少ないのです。