短時間睡眠でもパフォーマンスを発揮できるアスリートの共通点
脳の疲労を取るために「漸進的筋弛緩法」も活用しよう
松尾直俊=フィットネスライター
体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。今回は、体と脳を休養させる睡眠について。

アスリートにも短時間睡眠で平気な人がいる
忙しくなると、つい睡眠時間を削ってしまうビジネスパーソンは多い。「短時間睡眠でも健康でいられればいいのに」と思うかもしれないが、実際にはどうだろうか。
フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは、「アスリートから『短い睡眠時間でも大丈夫ですか?』という質問を受けることがあります。ごくまれに、短時間睡眠でも問題のない人もいますが、基本的には、十分な時間の、質の高い睡眠がパフォーマンスを発揮するためには欠かせません」と話す。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)によると、20歳以上の男女で「睡眠で休養を十分に取れていない」と答えた人の割合は20.2%となっている。特に働き盛りの40代では、30.9%にも上る。多くの人が、自分の睡眠は十分ではないと感じているのだ。
「私がこれまで見てきたアスリートでは、戦術パターンが多くて複雑な種目の選手は、睡眠時間を長く取る傾向があるようです。例えば、卓球などは『100mダッシュをしながらチェスをやるようなスポーツ』と言われるように、相手の動きやボールを見定めながら、3手先、4手先を読んだプレーをします。テニスやバドミントンも同様です。そうなると、ものすごく頭を使いますから、脳を休ませるため、しっかりと睡眠を取る必要があるのでしょう」(中野さん)
アスリートは、肉体的な疲労に加えて、脳の疲労もパフォーマンスに大きく関わってくる。一瞬で情報を処理して判断しなければならない競技だと、試合はもちろん、練習でも脳を使うため、睡眠でしっかり回復する必要があるのだろう。
「逆に、戦術パターンが少ない競技の選手は、比較的、短い睡眠時間でも大丈夫な人が多いような気がします。陸上や水泳などですね。もちろん、個人差はありますが」(中野さん)

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