日経グッデイ

中野ジェームズ修一の「遠回りしない体メンテ術」

冬のランニングには手袋2枚重ねより腹巻き

体の「中心部」を温めれば寒くても快適に

 松尾直俊=フィットネスライター

 体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。
 今回は、冬のトレーニングにおけるウェアの選び方について。

冬のシーズンに運動するときには、ウェアの選び方も重要になってくる。 (c)maridav-123RF

手や足の先が冷たいと気になるが…

 寒い時期に外で運動をするときの問題の一つが「防寒」だ。ランニングをするにしても、走り始めるときは寒いので厚着をしがち。また、手先や足先など、末端にいくほど冷えやすいため、つい手袋やソックスを厚手のものにしたり、2枚重ねにしたりする人もいる。

 ところが、フィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんは、「手袋やソックスの2枚重ね」は勧めないという。

 「手先や足先が冷たくなると、余計に寒く感じますよね。しかし、考えてみてください。手先や足先は、末端にいくほど細くなり、そこを通る血管も細くなっています。手袋やソックスを2枚重ねにすると、その部分が締め付けられ、血行が悪くなってしまうのです」(中野さん)

 人間の体温は、基礎代謝や筋肉などによって作り出されている。体内の温度は、中心部ほど高く、37~38℃ほどに安定して保たれている。これを「中核温(ちゅうかくおん)」という。そして、手足や顔など、末端にいくにつれて温度は低くなり、外部の環境によって温度が変化する。

 「中核温が安定的に高いのは、心臓や肝臓などの臓器を正常に働かせて、生命を維持するためです。一方、手足が冷えても命の危機に陥ることはありません。そのため、寒い場所に行くと、人間の体は中心部に血液を集めて38℃を保とうとするので、余計に手足の先が冷えてきます」(中野さん)

 つまり、手袋やソックスを2枚重ねにするなどして締め付けてしまうと、血行が悪くなって手先や足先に届く血液の量が減り、さらに冷えてしまう可能性がある。

 また、女性には冷え性が多いが、手や足の先が冷えてしょうがないという人は、代謝が落ちているのと同時に、血行が悪くなっていることも原因の一つなのだ。

寒いときは体の「中心部」を温めればよい

冬に活用したいのがスポーツ用の腹巻きだ。(写真提供:ヘルスポイント)

 「末端を温めるためには、体の中心部の温度を高めてあげればいいのです。つまり、中心部に十分な血液が供給されていれば、末端まで血液が行き届いて、手先や足先も温まるのです。冬場に野外で運動するときは、中心部を温めるために、スポーツ用の腹巻きや、ダウンベスト、カイロを利用するといいでしょう」(中野さん)

 スポーツ用の腹巻きは「ウエストウォーマー」などと呼ばれている。吸湿発熱素材が使われているので、体の動きを妨げないし、汗をかいても快適だ。

 使い捨てカイロも有効な手段だ。「手足が冷たいからと、そこに貼る人が多いですが、それは非常にもったいない使い方です。体の中心部を温めれば血行が良くなって末端まで血液が巡ります。ですから、腰やお腹の部分にカイロを貼るほうが効率的なのです」(中野さん)

 スポーツ用の腹巻きには、カイロを入れるポケットが付いているものもある。また、軽量に作られたランニング用のダウンベストなどを利用してもいいだろう。スポーツショップなどで探してみよう。

アウターは薄くてもOK!

中野ジェームズ修一さんの新刊『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社、2018年10月18日発売)

 また、熱は体の上のほうに向かって抜けていく。「ニットキャップネックウォーマーを着用するのも、防寒に一役買ってくれます」と中野さん。

 スポーツ用のネックウォーマーに効果があるのは、首には表面に近いところに太い動脈が通っていて、この部分が冷えるのを防げば、温かい血液が体を巡るようになるからだ。

 「寒いと、人間は皮膚からの熱の放散を防ぐために、できるだけ体表面積を小さくしようとします。つまり、縮こまった姿勢を取ろうとするのです。すると、余計に血行が悪くなってしまいます。ですから、本格的な運動に入る前に、ウォームアップで十分に体を動かして血行を促し、温めることも大切です」(中野さん)

 運動の開始時はウインドブレーカーを羽織っておいて、ウォームアップで体温が上がり、汗が出てきたら脱いで、ウエストポーチなどに入れるのもいいだろう。できるだけコンパクトにまとまるアウターを選ぶのもお勧めだ。

 「私自身がそうなんですが、運動をするときは厚着になりたくありませんよね。腹巻きやカイロを活用すれば、アウターが薄くても保温性が上がるんです」(中野さん)

 腹巻きも、着脱しやすいマジックテープ式のものがあり、それなら体が温まったら走りながら外すこともできる。上手に体温調整をしながら、効率的な運動を心がけて冬場を乗り切り、健康な体を作っていこうではないか。

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
スポーツモチベーションCLUB100技術責任者/PTI認定プロフェッショナルフィジカルトレーナー
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん フィジカルを強化することで競技力向上や怪我予防、ロコモ・生活習慣病対策などを実現する「フィジカルトレーナー」の第一人者。元卓球選手の福原愛さんやバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。2014年からは青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。早くからモチベーションの大切さに着目し、日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナーとしても活躍。東京・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」の技術責任者を務める。『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。最新刊は『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP社)。
女性が医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本