メタボはなぜ怖いのか ―内臓脂肪がもたらす“負の連鎖”を理解する
自覚症状がほとんどない間に、動脈硬化が着実に進行
二村高史=フリーライター
ビジネスパーソンの多くが気にする「メタボ」。キーワードが登場してから10年たちすっかり定着した感があるが、そこにはいくつかの“誤解”が潜んでいる。
第1回では、メタボの本質と最新事情を解説した。ここで「メタボ=単なる肥満」ではなく、ポイントは「内臓脂肪の蓄積」にあるということはわかった。では、内臓脂肪が多いとなぜそんなに問題になるのだろうか。今回は、メタボになると何がどう危険なのかを、結核予防会 総合健診推進センター所長で東京医科歯科大学臨床教授の宮崎滋さんに話を聞いていく。
前回の話で、「メタボ=肥満」ではなく、内臓脂肪がポイントだということがわかった。では、なぜ内臓脂肪が多いとそんなに問題になるのだろうか。
メタボといわれている人なら実感していると思うが、メタボは自覚症状がほとんどない。このため、本人が生活習慣に問題があると認識できないうちに、動脈硬化が進行していく。これこそがメタボの怖いところだ。そして、ドミノ倒しのように次々に体に異常が発生していく。ある日突然、心臓発作や脳卒中で死亡することのないように、メタボの危険性をしっかり認識しておきたい。
メタボは自覚症状がほとんどない、だからコワイ
「メタボリックシンドロームが危険なのは、手遅れになるまで症状がほとんどないという点にあります。本人はいたって元気なので、病気のことはまったく頭になく、生活習慣が好ましくないということも認識していないことがほとんどです。しかし、その間にも動脈硬化をはじめとする異変はどんどん進行しており、さまざまな病気の芽が顔を出しはじめているのです」と宮崎先生は警鐘を鳴らす。
動脈硬化は、一般に「血管の老化」と説明される。動脈の血管が硬くなって弾力性が失われた状態のことを指す。血管の内側にプラークがついたり、血栓が生じたりすることにより血管が詰まりやすくなる。これにより、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気を引き起こすのだ。
「心臓病と脳卒中を合わせると、日本人の死因の3分の1を占めます。これらはいずれも、動脈硬化が原因で起こることが多くなっています。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、それに喫煙などは、いずれも動脈硬化を進める危険因子です」(宮崎先生)