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夏の疲れはカレーで撃退!

知ってた? カレーは“おいしい”漢方薬

カレーがもたらす10の健康効果とは?

 仲尾匡代=医療ライター

日本の夏は暑くて長い。冷房が効いた室内は快適な一方で、外気との温度差によって不調を起こしやすい。そんな時こそ、カレーがいい。今回から3回にわたって、夏の不調を改善するためのカレーの効能や食べ方、具材などについて解説していこう。1回目はカレーに含まれるたくさんのスパイスについて、カレーに詳しい漢方専門医の丁 宗鐡(てい・むねてつ)先生に話を聞いた。「カレーの元となるスパイスは昔、薬として使われてきたもの」と丁先生は話す。

 カレーは“漢方薬”がふんだんに入った、究極の健康食の一つであることをご存じだろうか。薬として扱われてきたスパイスが大量に入っているカレーは、食欲低下や肝機能低下を防いだり、自律神経の働きを高めたりするなど、さまざまな健康効果が期待できるという。

 1回目となる今回は、カレーに含まれるたくさんのスパイスについて、カレーに詳しい漢方専門医の丁 宗鐡(てい・むねてつ)先生に話を聞いた。「カレーは夏の疲れ対策に最良の食事の一つです」と丁先生は話す。

薬として日本にやってきた、カレースパイスたち

カレーを構成するスパイスは、日本では薬として使われてきた歴史があります。(©Krzysztof Slusarczyk-123rf)

 わが国のカレーの始まりは、南蛮貿易が盛んになった安土桃山時代までさかのぼるともいわれている。カレーのもととなるスパイス類が数多く日本に入ってきた。「すでに、ペッパー(胡椒)、クローブ(丁字)、シナモン(肉桂)は、薬(漢方薬)として中国経由で伝来していましたが、ナツメグ(肉豆蔲:にくずく)は、この時代になって初めてもたらされたといわれています」(丁先生)。薬として持ち込まれたこれら4種のスパイスだが、同時にヨーロッパでは食用として用いられているということもこの時に伝わっている。ただし、これらのスパイスは日本においては、あくまでも薬として利用されていた

薬から食品へ、カレーライスの登場

 この後、カレーは明治時代以降、海軍を通じ、西洋料理としてイギリスから伝わった。軍隊や学校でその味を覚えた人が増えて庶民に知られるようになり、ようやくここでカレースパイスが、薬ではなく食品扱いされるようになったのである。しかし、これらのスパイスは、始めは、食品を扱う商店ではなく、薬を扱う商店で売られていた。

 薬として利用されていたカレースパイスの数々には、どんな効能が期待されるのだろうか。先に挙げた4つのスパイスをはじめとして、カレーに使われるスパイスの効能を表にまとめた。

 例えば、カレーのあの色はターメリック(鬱金:ウコン)による色。ターメリックに含まれる代表的な物質である、クルクミンは抗酸化作用がある。また、胃腸の働きを活発にする働きのある物質も含んでいる。

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表1◎ カレーに使われるスパイスとその効能
スパイス
(カッコ内は生薬名)
特徴 効果的な症状・不調
ペッパー(胡椒)
さわやかな香りと刺激的な辛み 冷え性、食欲不振、肥満など
シナモン(肉桂)
かすかな辛みと甘み、さわやかな甘い香り かぜ、不眠、ストレス、冷え性、胃弱、下痢など
ナツメグ
(肉豆蔲)
刺激的な甘い香りと穏やかな苦み 下痢、低血圧、不眠、ストレスなど
クローブ
(丁字)
個性的な強い香りとピリッとした辛み、かすかな苦み 食欲不振、肝機能低下、胃弱、下痢、腹痛など
クミン(馬芹)
個性的な強い香りとピリッとした辛み、かすかな苦み 食欲不振、肝機能低下、胃弱、下痢、腹痛など
ターメリック
(鬱金)
苦みや香りはないが、独特の風味がある 肝機能低下、二日酔い、月経異常、かぜ、胃弱、腹痛、肩こりなど
ジンジャー
(生姜)
清涼感のある甘い芳香と独特の辛み かぜ、冷え性、頭痛、胃弱、食欲不振、乗り物酔いなど
ガーリック
(大蒜)
刺激性のある特有の香り 便秘、かぜ、疲労回復、冷え性、むくみ、肥満など
マスタード
(芥子)
ツーンとする特有の辛みと芳香 食欲不振、胃弱、便秘、神経痛・リウマチなど
スターアニス
(八角)
かすかな辛みと苦み、甘い香り かぜ、咳止め、胃弱など
コリアンダー
(胡ずい子)
レモンのような芳香、かすかな辛みと口あたりのよい甘み 肝機能低下、下痢、かぜ、胃弱、関節痛など
(写真提供:ハウス食品)
奈良時代にさかのぼる、わが国のカレーの歴史

 カレーは、インド圏からヨーロッパ圏に広がっていったといわれているが、驚いたことに、現存する世界最古のカレースパイスは日本に存在している。それらは奈良の正倉院、聖武天皇の遺品とともに1300年近く保管されているのだ。

 奈良時代である753年、中国・唐代の高僧、鑑真が渡来。彼は仏教の教えを伝えるだけでなく、医学にも精通した人物で、大量の生薬(漢方薬の原材料)を聖武天皇へ献上した。この時の生薬の中に、カレーの原材料となるスパイスが存在していたのである。黒胡椒、白胡椒、丁字、肉桂。まさにカレースパイスとしてポピュラーなスパイスばかりだ。冷えた体を温める、頭痛を治す、胃腸の働きを高めるなど、様々な効能を求めて薬として用いられたとされている。

カレーに期待できる体にイイコトあれこれ

 もともと生薬として使われていたカレースパイス。これら複数のスパイスを使ったカレーにはどんなメリットがあるのだろう。丁先生はカレーの効能として10個の項目を挙げる。

表2◎ カレーに期待できる10大メリット
1.食欲の調整(抑制と亢進)
2.消化促進作用
3.新陳代謝促進効果
4.抗菌活性作用
5.自律神経調整作用
6.中枢神経刺激作用
7.ホルモン分泌刺激作用
8.循環促進作用
9.塩分を控えられる
10.寒暑に対する適応力が上がる

カレーは夏バテ解消にピッタリ

 様々な効能が期待できるカレーだが、特に夏の暑さに疲れた体には、より効果的に働くという。「体がだるい」「食欲がわかない」といった夏バテの人には最良の食事といっていい。

昔の夏バテと異なる、現代の夏バテ

 かつて夏バテと言えば、暑さで食欲が落ちたり、食中毒などで下痢を起こし、消化機能が衰えて体重が減ったりする、いわゆる「夏やせ」が代表的だった。ところが現代では、夏バテの症状は多岐にわたる。「朝起きられない、体がだるい、集中力が続かない、やる気がわかない、食欲もわかない…。こういった症状の多くは、自律神経の乱れが原因」と丁先生は説明する。

 エアコンの普及で、室内の冷房で体が冷えているのに、いったん外に出ると昔よりもずっと暑くなっている外気。さらに冷たい飲み物を飲んで体を冷やし…といったことを繰り返していると、体温調節をつかさどる自律神経が失調し、体を正常な状態に保てなくなってくる。「冷たいものの摂り過ぎで、むくんだり太ったりといったことも起こりがちです」(丁先生)。これが現代の夏バテの実態だ。

カレーは自律神経のバランスを調える

カレーは野菜などの具も多く入り、栄養面でのバランスに優れる。(©PaylessImages-123rf)

 「朝、起きられないのは、自律神経の働きが悪く、副交感神経と交感神経の切り替えが上手くいっていないため。カレーには、交感神経の働きを高める効果があります」と丁先生。日中、気が散ったり、ボーっとしたりするのも、交感神経が働いていないから。特にビジネスパーソンは午前中から大事なプレゼンや会議などがあったりするので、出社時間には体を「やる気モード」に切り替えておきたい。

 さらにカレーには、年齢とともに低下する新陳代謝を向上させる効果もある。カレーを食べると体がポカポカする、汗をかくという経験はたいていの人があるだろう。これは、スパイスの効果で血流がよくなり、新陳代謝がアップして、体内で食べたものがエネルギーに変換されていることの表れでもあるという。スパイスの発汗作用も新陳代謝アップに一役買っている。

 また、夏は食欲がなくなり、のどごしのよいそうめんやうどんなどばかり食べていて、炭水化物は過剰に、ビタミンやミネラルは不足になりがちだ。カレーは嗅覚や味覚を通じて腸の働きを刺激するので、食欲アップにもつながるという。カレーにはたくさんの野菜を具として入れることができるため、1皿で栄養を手軽に取りやすい

 1日のうちでも朝にカレーを食べることが健康効果を最大にすると丁先生は強調する。「朝カレー」が効果的な理由、さらに丁先生おすすめの朝カレーの食べ方も紹介しよう。

丁宗鐵(てい むねてつ)先生
百済診療所院長/日本薬科大学学長
丁宗鐵(てい むねてつ)先生 1947年東京都生まれ。横浜市立大学医学部卒業。北里研究所東洋医学総合研究所 研究部門長、東京大学大学院助教授、日本薬科大学教授、東京女子医科大学特任教授を経て、百済診療所を開設。2012年より日本薬科大学学長。テレビ、ラジオ、雑誌と多くのメディアで活躍中。著書に『病気にならない 朝カレー生活』(中経出版)、『はじめての漢方手帖』(メディア・パル)、『がんの嫌がる食事』(創英社/三省堂書店)ほか多数。
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